元防衛相が語る「台湾有事」日本が考えるべき備え 安全保障の実務に詳しい森本敏元防衛相に聞く

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一方、中国がこのような行動を取ったことを理由に先進国が何らかの制裁を取ろうとしても、数日の間にまとまらないと、それまでに中国の国旗が台湾に立つことになる。このような事態になると、その後は中国と戦争しないといけないことになり、どこも手が出せない。こういうシナリオを中国は考えているだろう。

――その際の中国の軍事的な課題は何でしょうか。

中国は台湾海峡を渡らないといけないが、渡るためには揚陸艦(ようりくかん:港がない場所などに沖合から上陸する作戦に投入する艦艇)が要る。ただ、揚陸艦の隻数は十分ではなく、2万5000人から3万人程度しか渡れない。人民解放軍230万人のうち、たったこれだけしか渡れないということだ。

また、中国は台湾海峡の制海権と制空権を圧倒的に持っていないといけない。それを阻害する対抗勢力は在日米軍の空軍と海軍だが、これを牽制しながら、われわれに対して短期決戦を挑んで目的を達成してしまったら、後はこちらも手が出せない。

中国はこのような軍事バランスを考えながら、アメリカがいちばん介入しにくい方法を取りつつ、諸外国が台湾を支援できないようにするだろう。台湾は孤島だから支援をしようと思うと、海上輸送路を使わなくてはいけない。

海上封鎖をやればどこの国からも支援物資は届かない。おそらく一部の物資は日本経由で行かないといけない。日本は中継点になる。中国は日本にいるアメリカ軍を牽制しながら、ほとんど抵抗勢力がいない状態で数日の間に台湾を取れればいちばんよいというシナリオをおそらく考えているだろう。

アメリカ軍が他の地域から応援が来る時間の暇(いとま)がない場合は、在日米軍が全面的に活動しないといけない。その場合には特に海空戦力が足らないといけない。特にアメリカ軍の海洋戦力が存在している時には中国は事を動かさない。アメリカの海軍部隊が中東などに派遣され、力の空白を狙って、中国は(台湾統一)シナリオを動かすのではないか。

在日米軍がほとんどカラの状況で事態が発生する。アメリカ空軍も在日米軍と在韓米軍で合わせて250機以下しかない。何か事が起きれば、朝鮮半島は間違いなくきな臭くなり、在韓米軍は動かせない。韓国軍は支援できない。すると、今ある在日米軍と日本の防衛力だけで事態に対応しないといけない。

ウクライナみたいに33カ国が武器を持ってきてくれるということはありえない。ありえないということは、あらかじめアメリカがそういう事態に対応できる装備を台湾に供与しているのかという問題になる。

アメリカはもう少し丁寧に見直すべきだ。今までアメリカが台湾に供与してきた武器等は、極めて防御用の性格の強い武器体系で、しかも十分でない。対艦ミサイルや対空ミサイルがもっと要る。

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