蛇口からハイボール「蛇口酒」の店が人気化のワケ コロナ禍で変化する「飲みスタイル」

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ちなみに、ホームタップのようなサブスクサービスの原価はどうなっているのか? 同じくアサヒビールの『ドラフターズ』を例に解説する。同サービスは、月額税込み7980円(月額基本料金:2990円+ビール料金2リットル2本:4990円)だ。

アサヒビールが展開する、定額制のホームサーバーは定着するか?(写真はHPより)

「4リットルを350mlのグラスで飲む場合、ジョッキ単価は698円ですから、飲食店よりも割高といえるでしょう。追加注文をしてプラス3リットル、つまり計7リットルを飲む計算だと、先の550円まで下げられます。ただ、コロナによって家計の外食費は約3割減少しました。その3割の行方が、“宅飲み”といった自分時間の豊かさの創出に流れていると思います」(坂口さん)

たしかに割高かもしれないが、自炊すれば食費のコストを抑えられるなど、アイデア次第でぜいたくな食卓を演出できる。そうしたニューノーマルの生活志向が、内食における蛇口酒人気を支えているといえそうだ。

コロナ禍、アフターコロナの中で生まれた変化

『ラムちゃん』のような「蛇口酒・コック酒」飲食店が人気の背景は、まだある。前出・片岡さんが教える。

「コロナ禍、アフターコロナの中で、店のスタッフとの接触をなるべく避けたいというお客様も少なくありません。卓上サーバーの設置に加え、QRコードを読み込んでスマホ上からもオーダーを可能にするなど、接触の機会を減らす工夫を進めた結果、スタッフを呼んでオーダーを追加する、グラスの交換といった作業が減少しました」

消費者がセルフで楽しめる時間を増やすことで、結果的に人件費を抑えることにつながる。また、こうした店舗のスタッフは、接客の対応に余裕があり“感じ”がいいという評判も。四方からオーダーの声をかけられ忙殺されれば、イライラしてしまう。だが、蛇口酒がある店ならば、ドリンクのオーダーは激減する。スタッフの働き方に変化が生じるのは明らかだろう。

それぞれのテーブルにサーバーを設置して客にセルフで注がせるサービスは、セット注文や小皿での提供が多い焼き肉業態と相性がよく、

「スタッフの数も抑えやすい」

と、坂口さんは指摘する。コロナによる飲食店の苦戦は、まだ続くだろう。だが、「蛇口酒・コック酒」が人気を集めているように、アイデアひとつで話題店になることだってある。

「その店に行く口実ですよね。“自分でハイボールを注げるお店があるから行ってみようよ”という具合に、口実があることが望ましい。今後の外食産業というのは、口実を作ることがポイントだと思います」(坂口さん)

わざわざ外食する理由があるかどうか─。これまで以上に自宅ではできないことを提供しなくてはいけない飲食店は、コロナによって新しい局面を迎えている。

<取材・文/我妻アヅ子>

さかぐち・たかのり
未来調達研究所株式会社所属。調達・購買、原価企画を担当し、バイヤーとして200社以上のコスト削減、原価企画を担当した仕入れ等の専門家。日本テレビ系『スッキリ』等、出演中。著書『調達・購買の教科書』など多数
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事