中国「ロックダウンで物流大混乱」日本への影響度 EMSの代替先を探し問い合わせ殺到の企業も

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20万円以内のものを簡単に送れるEMSは個人の利用が多く、荷物の中身も書類や電気製品、薬と多岐にわたっている。それらを正式通関が必要な一般宅配で送ると、内容物の種類や価格によっては追加の書類や関税が課されたり、「制限物」に該当することもあるという。

4月下旬には、高齢の女性が都内湾岸エリアにあるSFのオフィスを訪ねてきた。中国に単身赴任している夫とはゼロコロナ政策によるビザ制限などで長い間会えておらず、EMSも送れなくなり、困り果てて地方からやってきたという。

自身も上海で働く夫と1年半会えず、ワンオペで子どもを育てている許さんは、「EMS停止で日本人の方からの電話が増えて、実にいろいろな物がさまざまな事情で両国を行き来していることを実感した」と話した。

SFホールディングスのトラック(筆者撮影)

同社にとって今年の春は2020年2~4月の「マスク危機」以来の繁忙だという。2020年1月に世界で最初に感染が爆発した中国ではマスクが不足し、日本から大量に輸送された。

しばらくすると今度は日本がマスク不足に陥り、感染が落ち着いた中国からの輸入が激増した。この期間、同社には発送依頼と問い合わせが殺到し、倉庫はマスクであふれ返った。対応に疲弊して退職する従業員も続出した。

坂本さんは当時を振り返り、「あの時は営業スタッフも倉庫に入って荷物をひたすらさばいた。きつかったがマンパワーの戦いでやることは明確だった。今回のロックダウンは、わからないことが多く、お客様にもはっきり説明できないのがつらい」と話す。

配送可能な地域でも状況は異なる

3月に中国でオミクロン株が拡大し、各地で行動が制限されるようになってから、日本オフィスでは中国本社からデータを収集し、毎日企業サイトで最新情報を提供している。

大まかには地域によって「時間はかかるが指定の住所に配送できる」「指定住所までは配送できないが、営業所などの拠点で受け渡し可能」「荷物の消毒と一定期間の保管が課せられているため、かなりの遅れが出る」「配送不能」にわかれる。

配送可能な地域でも、通常なら3、4日で届くのが今は約3週間かかっており、同じ都市でも住所によって状況が異なり、政策も猫の目のように頻繁に変わる。

オペレーションの責任者である朱若曦さんは「中央政府と地方政府で方針が違うことはざらだし、ルールがあいまいなので解釈次第ということもある。中国最大手の当社でも全土の状況をすべて把握するのは不可能」と話した。

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