米中のアジア陣取り合戦で見えた国際秩序の変化 居丈高な脅し通らず、外交力が試される時代に
短期間にこれほど多くの多国間グループが重層的に形成されたことは歴史的にもあまり例のないことである。ウクライナに対するロシアの軍事行動が生み出した緊張に対応する必要性を認識したからなのか、軍事行動の生み出す悲劇と破壊に対する反動として各国が国際協調主義の重要性を再確認したためなのかは、まだわからない。
日米首脳会談後の共同声明は、これらのグループについて、「両首脳は、21世紀の課題に多国間システムがよりよく対応できるよう、これを強化し、現代化させる必要性を表明した」、「両首脳は、ASEANの一体性及び中心性の重要性を確認し、QUAD、AUKUS及びその他の多国間フォーラムの重要な取り組みを強調した」などと言及しており、日米両国政府が多国間フォーラムの構築を意欲的に推進していることを明らかにしている。
グループごとにメンバーが異なり、結束は緩やか
こうしたグループの特徴をあげると以下のようになるだろう。
グループごとに目的もメンバーもバラバラで統一感はない。アメリカが圧力や腕力で強引に作るのではなく、各国の主体性を重視するようになってきた。そのため、軍事同盟関係などと異なって各グループの結束は必ずしも強固ではなく緩やかな結束という性格を持っている。いずれのグループもアメリカの対中戦略の中に位置づけられているものの、参加国の中国に対する対抗意識には濃淡の差がある。つまりNATO(北大西洋条約機構)のような強固な同盟集団ではない。
QUADについて見れば、中国を意識して安全保障を前面に出したい日米豪とインドの間には発足当初から明確な違いがある。インドと中国との間では領土問題を抱え武力衝突も繰り返し起きており、他の3カ国とは緊張のレベルが異なっている。したがってインドは中国を過剰に刺激することは避けたいと考えており、QUADが軍事面を前に出せば、離れていきかねない状況だ。
しかし、日米にとってはインドが参加して初めて看板の「自由で開かれたインド太平洋構想」が成り立つことから、インドに歩調を合わせなくてはならない。その結果、QUADで取り扱うテーマは気候変動やアジア地域に対する投資、災害支援など無難なものにならざるをえない。
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