米中のアジア陣取り合戦で見えた国際秩序の変化 居丈高な脅し通らず、外交力が試される時代に
一方の中国は当然、強く反発するとともに昔ながらの発想で積極的に動いている。バイデン大統領のアジア訪問に対抗して王毅外相が5月末に10日間にわたって太平洋の島嶼国などを訪問、10カ国を対象に安全保障分野などの協力をうたった協定を締結しようとしたが、不調に終わったようだ。
これまで中国はアメリカに対抗して「一帯一路政策」や「上海協力機構」などを資金に物を言わせて、影響力の拡大を推進してきた。しかし、強引な経済援助、インフラ投資などの結果、一部の国が財政破綻したり、中国軍の常駐化受け入れを余儀なくされたりして、批判を浴びている。今回の太平洋島嶼諸国への対応も同じような手法だろう。
日本政府の担当者は「中国の発想はかつての王朝時代と同じで、自分たちについてくるならば利益を与えるという発想だ。これは冊封体制時代の朝貢システムと変わるところがない。これでは本当の信頼関係は構築できない」と分析している。
大国の圧力によらず、各国が知恵を出し合う時代
こうした状況が示すように、アジアでは今、アメリカと中国の間で激しい陣地取り競争が展開されているのだ。標的となっている中小国はさまざまな知恵を絞りだして巧みに生き残ろうとしている。そんな国々を相手に、強大な軍事力や経済力をバックに居丈高な姿勢で「こっちについて来い」と言ったところで外交的成果は期待できないだろう。
既存の世界秩序が揺らぎ新たな秩序への移行期を迎えた今、そしてウクライナで破滅的な侵略が続いている中、軍事紛争を回避するとともに新たな秩序形成に向けて互いに知恵や力を出し合う国際協調主義の意味が見直されているのかもしれない。まさに「外交力」が試される時代と言えるだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら