SPはなぜテスラをSP500ESG指数から除外したか ESG投資家にとって究極の心理テストのようなもの

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担当者が語る除外の理由

北米でのS&Pダウ・ジョーンズのシニアディレクターでESG指数の責任者でもあるマーガレット・ドーン氏は、「世界的に持続可能なエネルギーへの移行を加速させることが使命だと自ら宣言している企業が、ESG指数に採用されないということがあり得るのか」とブログに書き込んだ。自らの問い掛けに対して、テスラを「より広いESGのレンズを通して評価した場合、同業他社より劣後していた」ことを含め、「多くの理由がある」との考えを示している。

ドーン氏は、テスラの社会(S)および企業統治(G)の要素に焦点を当てており、これらが同社の総合的なESGスコアにマイナスに働いた。具体的には、カリフォルニア州の工場での人種差別と職場環境に関連する申し立てを巡る訴訟に加え、自動運転支援システム「オートパイロット」を巡る米運輸省道路交通安全局(NHTSA)の調査に対する同社の対応といった2件の事案を挙げている。

エール大学のトッド・コート博士など有識者はドーン氏に賛同しており、S&Pのメソドロジー(方法論)は企業業績に重点を置いているとした上で、テスラの「組織運営や管理体制は同業の主要企業と比べ、依然としてかなり未熟だ」と指摘した。

一方、投資家側からはS&Pの決定に対して強い反発もある。アーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッド氏はツイッターへの投稿で「ばかげているとしか言いようがない」とつぶやいた。

2000年代半ばにESG投資の促進につながるリポートを執筆した業界コンサルタントのポール・ウォッチマン氏も、テスラはESG指数に採用されるべきだとし、「今回の件はS&Pの採用基準がいかにゆがんでいるかを示している」と断じた。

市場は無視できず

テスラには企業統治や職場の健康と安全といった面でさまざまな問題があるが、ウォッチマン氏は、広い視野でこうした問題を見極める必要があると指摘。テスラの失敗や欠点は評価に関連する可能性があるものの、例えば大手の石油企業などと比較した場合では、それほど悪いとは言えないとの見方を示した。

大手ESG格付け提供会社のMSCIが自社のESG指数にテスラを採用していることも、ESGの本質を巡る議論をさらに混乱させている。

MSCIとS&PのESG指数のメソドロジーは非常に似通っている。両社共に指数採用銘柄から、たばこや武器、民間向け銃器、オイルサンド、発電用石炭(一般炭)に関連する企業を除外している。

ESGの基準や評価方法を巡る議論は一段と高まっている。BIのデータによると、パッシブ運用のESGファンドへの資金流入は4100億ドルにも上り、市場はESG指数を無視できない状況と言える。

BIのデュボフ氏はテスラについて、同社の革新的なEVは、よりグリーンな世界の創造に役立っており、投資家もその恩恵を受けていると指摘。同時に株主はマスク氏と米証券取引委員会(SEC)の対立や、ツイッター買収案件などで痛手を被っているのも事実だとし、「投資家は企業統治面での不手際を示す複数の兆候に一段と注意を払う必要があった」との見方を示した。

原題:

Tesla Creates Awkward ESG Questions With Ejection From S&P Index(抜粋)

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著者:Tim Quinson、Saijel Kishan

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