意外!北朝鮮とのビジネスで儲ける欧州企業 低賃金や高い技能は大きな魅力だが、制約も

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もちろん、問題もある。北朝鮮とのビジネスを体験した企業家にとって、閉鎖的な通信網と北朝鮮当局の一方的な措置は、ビジネス上の最大の障害となると口をそろえる。

たとえばインターネットは、国際電話や外部に接続できるネットにつながる外国人用のものと、北朝鮮住民だけが利用できる内部のネットに分離されている。そのため、事業用の連絡や問い合わせをするのも難しく、北朝鮮住民との接触やコミュニケーションが非常に難しいようだ。

さらなるネックとして、昨年にエボラ出血熱の流行を受けて、感染防止のために北朝鮮当局が入国者の隔離措置を行ったことを例に挙げる。こうした措置が、投資家や企業と、事前の協議や案内もないまま一方的に始まることが多い、ということだ。これが、ビジネス上の強いストレスになっているということだ。

「経済制裁による不自由」が最大のネック

また、国際的な経済制裁で金融面でも支障をきたすことがある。現金を直接現地まで持って行き、費用を支払うという煩わしさも頻繁にあるようだ。経済制裁が北朝鮮にとって最大のネックになっていることは間違いないようだ。

ただ、ユーロ・アジアコンサルタンシーのトニー・ミッチェル氏によれば、北朝鮮と国境を接する中国遼寧省丹東市が北朝鮮ビジネスの最前線として成長したと指摘、現在では北朝鮮から丹東市所在の企業に注文が来れば、すぐさま注文品をトラックに載せて国境を越えて北朝鮮内に運び、品物を受領した発注主が送金するということは日常茶飯事になっていると紹介する。

このような取引には、経済制裁に神経をとがらせる米国財務省の監視の目も届かず、また中国政府も黙認している状態だと言う。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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