事業構造をグローバル化し、「値下げ賃下げの罠」脱却--山田 久・日本総合研究所ビジネス戦略研究センター所長《デフレ完全解明・インタビュー第11回(全12回)》

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縮小

人口減少の中で消費は減っていく一方で、設備の除却は時間がかかるので、モノ余りになっている。そうすると、儲からない企業は潰れていくというのが普通だが、日本は、企業が潰れそうになると資金支援をして潰さないことを繰り返してきた。産業や企業の新陳代謝を止めている結果、ますます値下げと賃下げの罠をつくっているという構造だ。

現状維持を図り、問題の先送りを続けてきた結果が、今のデフレだ。つまり、変化に供給サイドが対応していないことが問題であり、金融政策では解決できないし、むしろ金融政策は先送りを継続するという意味で、逆効果になる。

--供給サイドを変えていくにはどのようなことが必要ですか。

人口減少で縮小している国内市場の中で競争をしていると、悪循環は続く。グローバルな市場を見て、その中で儲かる事業に特化していく産業構造の転換が必要になる。

縮小均衡型の競争に陥った責任は企業だけにあるのではない。日本の労働組合にも問題がある。

日本の労働組合は雇用が減るよりは賃金が下がったほうがいいという考え方で、賃下げを受け入れてきた。そして、政府も労働移動を進めない政策を取ってきた。だから企業も産業構造の転換ができない。企業も労働組合も、さらに個人も考え方を変えていかなければならない。

一つは各企業が海外展開を活発にして、その利益を国内に還流させる仕組みを作ることが課題だ。成長している新興国の需要を取り込めるように事業構造を変えていく。もう一つは、国内で医療、介護、保育、教育、農業といった規制の強い分野でもっと規制緩和を進め、事業のチャンスを作っていくことだ。

製造業についていえば、日本企業は製造拠点を国内に残すことにこだわりすぎているのではないか。高付加価値商品は日本で、汎用品を海外で作るという体制をとってきた。しかし、サムスンが新興市場で成功したのは現地でマーケティングをやって、現地のニーズに合う商品を作ったからだ。新興国の人も目が肥えてきているので、各地域に応じた研究開発、商品開発、製造をしていかないと売れない時代になっている。

国内は本社機能強化へ、専門家育成へ大学改革も

では、国内は捨てるのかといえば、そうではない。米国の先進企業の例が参考になる。グローバル展開をしていけばいくほど、企業体はバラバラになるリスクを抱える。そこで、米国のグローバル企業は本社の機能を強くしていった。知的財産権の管理や人材の育成・管理、特に現地の優秀な人を本社の幹部候補生として育て、競争させている。企業の考え方を現地に浸透させると同時に、優秀な人を引き留める狙いもある。

 主要先進国で唯一、デフレに陥っている日本。もう10年以上、抜け出せないままだ。物価が下がるだけでなく、経済全体が縮み志向となり、賃金・雇用も低迷が続く。どうしたらこの「迷宮」からはい出し、不景気風を吹っ飛ばせるのか。「大逆転」の処方箋を探る。 お求めはこちら(Amazon)

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