2022年5月の日米首脳会談で発表された日米首脳共同声明で、両首脳は核拡大抑止の強化を約束する一方で、中国の核戦力の透明性を高め、核軍縮の推進を呼びかけた。日米首脳会談の共同声明として中国に核軍縮を呼びかけるのは、異例のことである。
今年に入り、日米両政府は核拡散防止条約(NPT)に関する共同声明を発表し、そこでも「中国に対し、核リスクを低減し、透明性を高め、核軍縮を進展させる取り決めに貢献するよう要請」しており、日米両国の中国の核戦力に対する働きかけを強化している。
ロシアのウクライナ侵攻によって、新戦略兵器削減条約(新START)の改定のメドが立たず、アジアでは中国の核戦力増強や北朝鮮の核開発が進む中で、日米両国が核拡大抑止を強化しつつ、中国に核軍縮を促す背景には何があるのか。これまでの中国の核兵器と日中関係の歴史を振り返りつつ検討する。
「核兵器国」中国と「核の傘」の確認
1964年に最初の核実験を成功させて以来、中国は名実ともに「核兵器国」(1970年に発効した核兵器不拡散条約における「核兵器国」の地位を確立)となったが、中国の核戦力は米ソに比較して僅かな規模でしかなかった。毛沢東国家主席が、アメリカの核兵器を実践では運用が困難であるという意味において「張子の虎」と形容していたことはよく知られている。しかし、実際には中国指導部の核兵器に対する脅威認識は先鋭で、1950年から60年代にかけて勃発した朝鮮戦争、インドシナ戦争、台湾海峡危機などの過程で、アメリカの核兵器使用の可能性に直面したことにより、「核対抗力」が強く意識されるようになった。
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