人はなぜ「マスクをしていない人」を許せないのか 脳内で起こっているカラクリを精神科医が解説

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医学的にいうと、イライラしているのは、自律神経系の交感神経が優勢な状態といえます。

交感神経が活発に働くと、血圧や心拍数が上がり、呼吸数が増えます。一方、副交感神経の働きが鈍って、精神的にリラックスできなくなります。消化器系の機能が落ちるため、食べ物をおいしく感じられなくなり、なかなか眠れなくもなります。そうしたことが重なって、さらにイライラするという悪循環を招きがちです。

そうしたイライラを防ぐには、まずは食べ物から「セロトニン」を補給することです。これまで述べてきたように、セロトニンは脳内の神経伝達物質であり、これが不足すると、ちょっとしたことでイライラしやすくなります。

セロトニンの材料となる肉を食べよう

その量を増やすには、日の光を浴びるほかに、原料となる食べ物を摂取するのが有効な策です。セロトニンの原料はトリプトファンというアミノ酸なので、アミノ酸を含む食べ物、具体的には、肉類を食べるのがいちばんです。

そもそも、栄養不足は、それ自体がイライラを招く原因になります。たとえば、朝食抜きの生活を続けると、血中ぶどう糖濃度が低下し、メンタル面が不安定になりがちです。栄養不足は、さまざまな理由から、イライラの原因になるのです。

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また、イライラを防ぐには、睡眠を十分にとることも重要です。ふだんは温厚な人でも、睡眠不足が続くと、イライラしはじめるのは、経験的にご存じのことでしょう。睡眠欲求が満たされないと、人は神経過敏となり、ふだんは気にならないようなことにも、イライラしはじめるのです。

ただし、睡眠に関しては個人差が大きく、「6時間眠れば十分」という人もいれば、「8時間は必要」という人もいます。私の場合は、夜6時間寝て、1時間昼寝するという睡眠法が最適のようです。

コロナ下で生活が不規則になりがちですが、自分に合った睡眠時間を守って、脳の疲れをしっかりとることも意識してみてください。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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