名鉄とJRどっちが優位?「名古屋近郊」の競合区間 スピードや運賃、利便性を区間ごとに比較

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豊橋ー岐阜間は名古屋への通勤圏。JRが都市間を快適なクロスシート車で高速で結ぶ点輸送なら、名鉄は沿線の中小都市や町をこまめに結ぶ線輸送がメインになった。そのため、名鉄は料金不要の一般車はロングシートの比率を高くして混雑緩和を図り、特急・急行と普通との緩急連絡の改善も進めてきた。

名古屋都市圏は〝世界のトヨタ〟のお膝元で、昔から車王国だ。鉄道のライバルは「車」。営業が仕事のとあるマイカー族は、「金を払うならJRだね……」とコメントした。理由は「速いし、車両もよく、運賃も安い」。マイカー族は速い、安いに魅力を感じるのだろう。

JRと名鉄はそれぞれの舞台で地域サービスに貢献しているが、名鉄はスピードこそ遅いが、きめ細やかなダイヤ設定、使いやすい割引切符がセールスポイントだ。しかし、PR不足なのかその魅力が浸透せず、割引切符でもわずかな追加で新幹線に乗れるJRに旅客のハートは吸い込まれている。でも、豊橋ー名古屋間はこれも選択肢の1つだ。

JRとの並行区間(名岐間・名豊間)の現況

昭和の名鉄は〝中京の雄〟として君臨した。国鉄も民営化前から東海道本線の快速に〝私鉄風ロマンスカー〟117系を投入。JR東海の発足後は、ダイヤ・車両・切符(企画商品の割引切符)とも高水準のサービスで追い打ちをかけてきた。現在、豊橋ー岐阜間はJRの新快速が都市間輸送の基幹をこなし、朝夕には停車駅が少ない特別快速も走る。

中でも名古屋ー岐阜間は、スピード・運賃ともJRが優位。以下は昼間のデータだが、JRの「快速」(特別快速・新快速・快速)は途中、尾張一宮のみに停車し最速18分、普通でも最速26分で運賃470円(大都市圏特定運賃適用)。名鉄は快速特急・特急とも最速28分でJRの普通より遅く、運賃は570円。運転本数は毎時、JRが「快速」・普通とも各4往復の合計8往復。名鉄は快速特急・特急・急行を合わせても6往復。数字を見る限り比較にならない。

ただし、JRの快速が停車しない稲沢(一部の快速は停車)は、名鉄の国府宮駅が市街中心部にあり、同駅は空港アクセスの「ミュースカイ」、快速特急を含む全種別が停車するので名鉄が優位。また、新木曽川と笠松を快速特急標準停車駅(平日朝の一部上り特急は特別通過)に格上げしたのは、JR木曽川駅が普通しか停車しないので〝すき間〟を補い、笠松はJRの駅がないのを活かした地域サービスでもあろう。

一方、豊橋ー名古屋間は現在、スピード・運賃とも名鉄が優位。以下は昼間のデータだが、名鉄は快速特急で最速49分・運賃1140円。JRは新快速で同51分( 下り)・1340円。スピードでも名鉄に軍配が上がるのは、JRが2010年3月13日のダイヤ改正以降、「快速」のスピードを見直したからだ。

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