名鉄とJRどっちが優位?「名古屋近郊」の競合区間 スピードや運賃、利便性を区間ごとに比較

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1987年4月1日の国鉄分割民営化以降、名鉄の営業施策はJR東海の動向を意識し、精力的に取り組んできた。

そのトップは、1988年7月8日改正で登場した前面ハイデッカー展望室がある1000系「パノラマSuper」。JRの「快速」に対抗し、名古屋本線の特急(有料・座席指定)に投入した。そして、1990年10月29日改正では特急営業政策を変更。高速(旧特急・料金不要・自由席)を廃止し、名古屋本線の特急には、特急と旧高速をドッキングさせた一部指定席車(現=一部特別車)を新設、自由席は一般席車(現=一般車)と呼称した。

同改正で、名鉄特急は13年ぶりに料金不要サービスが復活し、名古屋本線の特急の一部は最高速度を時速120㎞に引き上げた。翌1991年10月21日改正では、1000系「パノラマSuper」使用の一部指定席特急の一部を異制度貫通編成化し、一般席車には新造の1200系を連結。ちなみに、この間の設備投資は莫大な金額となったが、〝中京の雄〟を守勢するために、背伸びの営業施策を行っていたようでもある。

スピードから利便性へシフト

しかし、1995年9月1日、名鉄は普通運賃で最大20%もアップする運賃・料金改定を実施した。筆者は同改定の申請時における公聴会で、運輸省(現=国土交通省)運輸審議会から条件付き賛成の一般公述人に選任された。同改定はバブル崩壊による利用客の減少、不採算路線を多数かかえる厳しい経営環境の中での設備投資で、輸送改善資金が底をついた感もある社の現状を懸念し種々改善策を提言、条件付きで賛成意見を述べた。そして、認可後の改善策では拙意(せつい)の多くが反映されたものの、JRとの並行区間では運賃格差が拡大。途中区間を除き客離れが加速し、この値上げはタイミングが悪かったようでもある。

そうした状況下でもあり、1999年5月10日改正では、JRとのスピード競争に終止符を打ち、名鉄は地域密着の利便性を強調する「線輸送」に転換。JRと競合しない名古屋本線の国府宮は特急標準停車駅に昇格した。以後、地域密着ダイヤに磨きをかけ、中部国際空港開港に備えた2005年1月29日改正へと続く。そして、2008年12月27日改正では、犬山線や常滑線などを含む全特急(含む快速特急)を一部特別車化、名古屋本線の特急(同)の約半分は犬山線の新鵜沼発着に振替え、「点輸送」はJRに一任。名鉄は「線輸送」で地域に貢献する姿勢を強調し、両社は共存共栄の時代に入ったようでもある。

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