アイデアが「バカウケする人」の頭の使い方4工程 普通の人との違いは才能ではなくスピードだけ

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たとえば、昨年大ヒットした曲、「うっせぇわ」。

一度聴いたら忘れられない強烈なこの曲のヒットは、Adoの声の力もありますが、なんと言ってもリフレインされる歌詞のアイデアがあらゆる世代に拡散した要因でしょう。

作詞は、ポカロPのヒットメーカーsyudou。独自のダークな世界観を展開し続ける彼にとって、この曲は特別なものではなかったと思います。それでは、なぜあれほどのヒットに結びついたのでしょうか。

その理由は、彼の頭の中にあります。本人も無意識かもしれませんが、4つのキメワザを頭の中で短時間に実践したのです。

「うっせぇわ」に見る「4つのキメワザ」

「世の中のみなさまが本当にいろんなことに耐えて耐えて、シンプルに言うとうるさいことばっかりなので。みんなが感じているけど言葉にしてないワードって曲にしたらおもしろいかな」と思い、作成したとインタビューで答えています(NHK「あさイチ」2021年10月20日)。

これは、まさに「ナリキリ」です。彼の言う「みなさま」になりきって、一番望むところをしっかりととらえています。

その「みんなが感じているもの」を言語化するにあたり、さまざまな言葉が思い浮かんだはずです。「イヤだ」「ダルい」「面倒」「腹立つ」「黙れ」などなど。

これが「テキシリ」の段階です。彼は、そうして浮かんだ凡庸な言葉を巧みに避けています。

その発想法は、そのままこの曲の歌詞にも反映されています。「一切合切凡庸な」「その可もなく不可もないメロディー」「二番煎じ言い換えのパロディ」など、彼は凡庸な表現に敏感で、それを意識的に回避して自分の表現を発想しています。

彼は、わざわざ「シロカベ」に張り出すことはしなかったかもしれませんが、スマホやパソコンに浮かんだ言葉を書き並べたかもしれません。自分の頭の中に浮かんだアイデアを一度どこかに吐き出したはずです。

そうして、最後に「ソギキリ」。たくさんの言葉をそぎ落とし、ベストなものを選択したのです。それが、「うっせぇわ」という相手や社会を全否定する心の中のつぶやきです。このシンプルで鋭角的なフレーズを、しかもリフレインするアイデアを思いついたとき、ヒットは約束されたと言っていいでしょう。

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