ネタニヤフ首相による、閣僚2人の解任と翌日のイスラエル国会解散は驚きだった。2年以上前倒しの3月の総選挙で、首相が失職する可能性もあり、これはイスラエルのみならず中東各国に重要な意味を持つことになろう。
昨夏まで、首相は無敵に思えた。野党のヘルツォグ労働党党首を首相に迎えることに肯定的なイスラエル国民は10%に満たなかったはずだ。状況が変わったのは、先に家庭の事情や政策の対立を理由に2閣僚が突然辞任してから。停戦となったガザ侵攻では、公約の「打倒ハマス」が達成されず、信頼が揺らいだ。
イスラエル国民が抱いた不安
欧州の複数の議会が2014年にパレスチナを独立国家として認めると、和平交渉の失敗をパレスチナ人のせいにしていたイスラエル国民の多くは不安を抱き始めた。さらには、ネタニヤフ首相がオバマ米大統領と公に衝突したため、イスラエルは孤立を深め、安全が脅かされるという不安が国民の間に湧き起こった。
国内状況は改善されていない。11年の大規模なデモ以降にネタニヤフ氏が打ち出した、若いカップルが負担する法外な生活費への対策は実現されておらず、住宅価格は上がり続けている。
さらに、イスラエルに住むイスラム教徒、キリスト教徒、ドゥルーズ派の人々を顧みず、イスラエルをユダヤ人国家とする法案を推し進めたことで状況は壊滅的になった。イスラエルのユダヤ人としてのアイデンティティを民主主義原則より強調し、連立政権内に分裂を生んだ。
指導面での優柔不断さが露呈したネタニヤフ首相は、対立するラピド財相とリブニ法相を解任し、総選挙を決定した。しかし、ヘルツォグ氏とリブニ氏が選挙戦で連立を組むと公表。彼らが勝利すれば、首相を交替で務めることになる。ネタニヤフ氏は今や、イスラエル国会で最大議席を占める公算が高い中道左派陣営と対峙し、ダメな首相と見られている。
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