産業構造の改革が必要、金融緩和はやめるべき--野口悠紀雄・早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授《デフレ完全解明・インタビュー第4回(全12回)》
製造業から脱却、高付加、価値のサービス業へ転換
──日本経済が停滞から抜け出す処方箋は。
まず、金融政策が正常に働くような経済に変える必要がある。産業構造の改革しか処方箋はない。つまり、新興国と同じことをやらないということ。大まかに言えば、製造業から脱却して、付加価値の高いサービス産業に移行するということ。製造業であれば、アップルのように高い付加価値を実現するようなビジネスモデルに変えていくべきだ。
米国を見ると、こうした付加価値の高いサービス業であるITや先端的な金融業には需要があり、金融危機後も高い利益を上げている。
──供給構造を変えるということですね。それは可能でしょうか。
変えていくことは非常に難しい。専門的な人材が必要となるからだ。とりあえずは、明治維新のときのように、お雇い外国人しかない。外資の日本への直接投資を促す資本開国が必要だ。日本の企業や経済産業省が敵対的買収防止策に走るのが間違っている。焼け野原になるか、または外圧しかないかもしれない。今は、まだ居心地がいいから、若い人も海外へ留学して苦労しようという気もない。ただ、焼け野原になっても変わりにくいのが、規制によって守られている大学とマスメディア(笑)。日本語の壁にも守られている。
──需給ギャップの解消のためには需要を増やすべきと言う主張があります。
需給ギャップはあるが、原因は、供給が過剰なこと。設備も雇用も過剰で、過剰なものを切って構造が変えられれば、需要は十分ある。たとえば、金融業について、日本の国内は間接金融の市場であって、投資銀行サービスの需要はないという議論があるが、国内に限定する必要はない。サービス産業も輸出産業になりうる。米国のサービス産業は経常黒字で、財貿易収支の赤字を補っている。問題は変えられるかどうかだ。
──政府が「新成長戦略」で育成すべき戦略分野を挙げています。
政府は一切手出しをすべきでなく、企業がやることだ。米国のIT産業にしても先端的な金融にしてもマーケットで競争しながら生まれてきたものだ。古い製造業を守ろうとするエコカーやエコポイントといったものは、絶対にやるべきではない。雇用調整助成金が続いているが、これもやめるべきだ。
■デフレを理解するための推薦図書■
『雇用・利子および貨幣の一般理論』 ジョン・M・ケインズ 著/東洋経済新報社
『日本を破滅から救うための経済学』 野口悠紀雄 著/ダイヤモンド社
のぐち・ゆきお
1940年生まれ。63年東京大学工学部卒業、大蔵省(現財務省)入省。米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授を経て、2005年4月より現職。近著に『経済危機のルーツ』『日本を破滅から救うための経済学』など。
撮影:今井康一
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