NFTと「推し活」の相性がすこぶる良いカラクリ 二次流通のジレンマを解消する可能性もある

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そうした「一点物」の値段は、「推し」に対する忠誠心によっていくらでも変わる、というところが、ただのコインとは決定的に違います。

コインの価格は需要と供給のバランスで変わり、買いたいという人が多ければ多いほど、値段が上がっていきます。しかし、NFTの場合は、流動性が高いかどうかは、それほど大きな問題ではありません。それを買いたいという人が、たとえ世界中にたった1人しかいなくても、その人が「この画像には100万円の価値がある」と思えば、100万円の値段がつくのです。

つまり、買いたい人の多さにかかわらず、一意的に値段が決まる。唯一無二のNFTだからこそ、そういう取引が成り立つのです(ただし、後述する二次流通市場では、需要が多いほど高値がつく傾向があります)。

アンティークコインやビンテージワインも、市場原理によって、信じられないような高額で取引されることがあります。NFTもそれと何も変わらないのです。逆にいうと、ある特定のNFT作品に誰がいくら払おうが、その人の自由ということです。他人がそれを批判したり、「あなたはダマされている」と訳知り顔で忠告したりするのは、本人にとっては「余計なお節介」でしかないのかもしれません。

NFT作品を手に入れた人が、それを別の人に売ることもあるでしょう。芸能人の手書きのサインや、スポーツ選手があの瞬間に着ていたユニフォームのような「一点物」であっても、それを売りたい人と買いたい人がいる限り、二次流通市場(マーケットプレイス)が発達するのは、ごく当たり前の風景です。

クリエイターに収益を還元できる仕組み

しかし、「限定品」や「一点物」の二次流通市場が盛り上がれば盛り上がるほど、そこにつけ込む「転売ヤー(希少価値が高いグッズやチケットなどを買い占め、高値で売りさばく転売業者)」が参入してくるのは避けられません。とはいえ、「安く仕入れて高く売る」ことは商売の基本中の基本であり、転売自体はリアル世界で普遍的に見られる現象にすぎません。一方、作品を生み出したクリエイターにしてみれば、自分の作品が高く評価され、二次流通市場でどれだけ高く売れたとしても、自分の懐に(ふところ)は一銭も入らないという問題がありました。

どんな商品でも同じですが、「新品」を買ったときは、その代金の一部を売り手(販売業者)が受け取り、残りは作り手(メイカーやクリエイター)の手に渡ります。しかし、いったん売れたあとの「中古品」の売買(二次流通市場)では、代金はそれを売った人と販売業者が分け合うだけで、メイカーやクリエイターは完全に蚊帳(かや)の外です。

ファン心理としては、大好きな「推し」のグッズやチケットは、それが入手困難なものであるほど手に入れたい。ところが、中古品(転売品)を正規の値段の5倍、10倍で買ったとしても、そのお金は「推し」のところには届かず、「転売ヤー」の手に落ちてしまうわけで、そこに大きなジレンマがありました。

しかし、NFTなら、そうしたジレンマを解消できるかもしれません。NFTを可能にしたスマートコントラクトは、あらかじめ「こういう条件のときはこういう行動をする」と決めておけば、それを自動で実行してくれるプログラムでした。そのため、たとえば「二次流通市場で売買したときはクリエイターに代金の◯%を送る」とプログラムに書いておけば、中古品が売れた時点でクリエイターに分配金を送る仕組みをつくることは、それほどむずかしくないのです。

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