ウクライナ混乱に乗じて侵攻狙う別の旧ソ連国 ロシアとトルコを巻き込むもう1つの衝突危機

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2020年11月の停戦合意を祝うアゼルバイジャンの人々(写真:Ivor Prickett/The New York Times)
アルメニア系住民が多数暮らす「ナゴルノ・カラバフ」の領有権をめぐるアルメニアとアゼルバイジャンの対立。世界の関心がウクライナに向くなか、こちらも衝突危機が。

アルメニアとアゼルバイジャンが小規模に衝突

ウクライナ戦争が3カ月目に突入するなか、カスピ海と黒海に挟まれた南カフカス地方ではロシアの同盟国であるアルメニアが隣国アゼルバイジャンの動きに神経をとがらせている。両国の国境地帯では今年3月に小規模の衝突が発生。アルメニア側は自国の兵士少なくとも2人が死亡したと発表した(後に死者は3人であることが判明)。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら

ロシアやウクライナと同じく、アルメニアとアゼルバイジャンはいずれも旧ソ連の共和国。両国の間に横たわる山岳地帯のナゴルノ・カラバフの帰属をめぐり、長年にわたり紛争を繰り広げてきた関係性も似ている。直近では2020年9月に紛争が再燃。44日間にわたる戦闘で、民間人を含む多数の死者が出た。

ナゴルノ・カラバフはロシア革命後にアゼルバイジャンに編入され、ソ連時代にはアゼルバイジャン共和国内の自治州だったが、アルメニア系住民が多く住む。アゼルバイジャンからの分離独立を主張してきたアルメニア系住民はソ連崩壊後、「アルツァフ共和国」として独立を宣言。ただし他国の承認はほとんど得られていない。

20年の紛争を終結させた停戦合意で、この地域の多くはアゼルバイジャンに返還され、アルメニア領内に残された一帯にロシアの平和維持部隊が展開することになった。

ロシア軍がウクライナ東部の制圧に総力を挙げる今、アゼルバイジャンが残る一帯の奪還を目指して本格的な攻撃を仕掛けてくるとみて、アルメニア側は警戒感を募らせている。

「私が話している間にも、アゼルバイジャン軍がアルツァフでアルメニア兵を殺している」。本誌にそう訴えたのは、アルメニアの国会議員、イク・マミジャニャンだ。

アゼルバイジャン軍の最近の攻撃は2020年11月に成立した停戦協定に「明らかに違反する」と、マミジャニャンは言う。「われわれはそもそもこの協定に満足していないが、彼らはそれさえも破った」。アゼルバイジャンはロシアがウクライナと戦っていることに「付け込んで」、その隙に攻撃を開始したというのだ。

3月に起きた衝突についてアルメニアが発表を行った当初、アゼルバイジャン側はこの発表には「意図的な誇張」があると主張していた。

だがロシア国防省がアルメニア領内のロシアの平和維持部隊の駐留地域にアゼルバイジャン軍が侵入したと発表し、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相がアルメニアのスレン・パピキャン国防相、アゼルバイジャンのザキル・ハサノフ国防相とそれぞれ電話で話し合ったため、アゼルバイジャン側も衝突が起きたことを認めざるをえなくなった。

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