ウクライナ混乱に乗じて侵攻狙う別の旧ソ連国 ロシアとトルコを巻き込むもう1つの衝突危機
さらに、アメリカはフランス、ロシアと共に、ナゴルノ・カラバフの和平を担う欧州安保協力機構(OSCE)ミンスク・グループの共同議長を務めてきた。その立場からも「引き続き、紛争の長期的な政治的解決を実現するために双方と協力するべく、深く関与していく」と、プライスは語った。
ウクライナとロシアの戦いと同じ
プーチンは3月31日にアリエフおよびアルメニアのニコル・パシニャン首相とそれぞれ電話で会談し、地域の安定について議論した。ロシア外務省も声明を発表し、「当事者に自制を求め、最高レベルで合意した現在の3国間協定を厳格に遵守するように求める」と述べている。
ウクライナとロシアが自分たちの戦いを、領土問題だけでなく文明の争いでもあると捉えているように、アルメニアの支援を受ける「アルツァフ共和国」も、自分たちを歴史上のもっと大きな争いの最前線と見なしている。
ウクライナとロシアはそれぞれ相手をファシズムと喧伝する戦略を取り、プーチンはウクライナの「脱ナチス化」のためとして戦争を正当化している。
2014年にウクライナで親欧米政権が誕生したことを受けて、東部のドネツクとルハンスク(ルガンスク)の親ロシアの分離独立派が武装蜂起した際も、ロシアはウクライナがロシア系住民を標的にしていると非難した。
「アルツァフ共和国」のダビド・ババヤン外相は、アゼルバイジャンとトルコもナチスドイツのやり方に倣って、分離独立を主張しているアルツァフの領土からアルメニア系住民を追い出そうとしていると主張する。
「アゼルバイジャンはウクライナにおけるロシアの戦争を、この地域で自分たちの目標と計画を最大化する機会として利用している」。すなわち「汎テュルク系諸民族の帝国」の構築だ。
「アゼルバイジャンとカラバフの紛争は、文明社会に対する挑戦でもある」と、ババヤンは続ける。「ここに価値と価格、理想と利害のジレンマがある。アルツァフは破滅の危機に瀕し、ジェノサイド(集団虐殺)と存続の危機に直面したが、国際社会の適切な対応はなかった。『価値』より『価格』が、『理想』より『利害』が優先されるからだ」。
「このジレンマの結果として侵略を容認された者が、実際に侵略する。こうしたやり方は遅かれ早かれ、堕落につながるか、さもなければ破壊があるのみだ」
(執筆者:トム・オコナー)
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