マスク越しの意思疎通「声の使い方で超改善」の訳 「高い声」と「低い声」はそれぞれ役割がある

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一戸建てに住んでいる人は、巣ごもり生活でも家の中で結構歩いているものです。しかし、ワンルームマンションなどに住んでいる若者は、数歩歩けば、部屋にあるものすべてに手が届きます。結果的に下半身の筋肉を使うことが少なくなってしまいます。

私は大学の授業で「総合芸術論」という科目を持っています。演劇入門のような科目で、「声を出す」「表情豊かにしゃべる」「身体全体を使ってコミュニケーションをする」というのが目的の科目です。

メディア芸術学部の教員なので、普段はPCに向かって絵を描くことが好きな学生を教えています。勉強でPCの前にいて、趣味でもPCの前にいるという学生たちに、何とか筋肉を使ってもらおうと始めた科目です。

2019年までは対面でやっていたので、教室を動き回ることができました。それ以降はリモート授業ということもあり、PC画面に入る範囲での「動き」や「発声」をやっています。残念ながら走り回ることはできません。しかし、エクササイズやストレッチなどで、巣ごもり生活では使わない筋肉を刺激する動きをやってもらいます。すると、身体が覚醒してくるものです。

例えば、両手を水平に開き、「片足立ち」を1分やってもらいます。小学校時代は簡単にできたことができなくなっている人もいます。学生たちは、少し動いただけで筋肉痛になることに驚き、自分の筋肉が衰えていることを自覚します。「これではいけない」「明日は少し家の近所を歩こうか」などと思うだけでも意義があると思っています。

本当に翌日から、運動を始めてくれる学生が沢山いるとは思いませんが、少なくとも「これではいけない」ことに気づくだけでも、十分に役に立つ授業になっているのではないでしょうか。

身体が動かないと、表情もますます乏しくなる

身体全体を使って、コミュニケーションをすることは大事なことです。自分の感情や伝えたいことが相手により伝わりやすくなります。

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身体が動かないと、表情もますます乏しくなっていきます。ただでさえ、表情や身体全体での表現が控えめな日本人がますます「何を伝えたいのかわからない人」になっていくことを私は危惧しています。

晴れて自由に対面コミュニケーションできるようになったとき、筋肉が衰え、動かなくなっていることがないよう、日々確認し、鍛えておきましょう。そして筋肉とともに確認してほしいのが、体重です。1日に1回は体重計に乗る習慣をつけましょう。

マスク時代、リモート時代はさらに「見た目」が重要になっていきます。人に会うことが減り、容姿に無自覚になることが簡単な時代だからこそ、自分を律し、つねに見た目を整えておく。それができる人は、人から信用を得ることができます。

重要:身体が動かなければ、表情も動かない
竹内 一郎 宝塚大学・東京メディア芸術学部教授

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たけうち いちろう / Ichiro Takeuchi

1956(昭和31)年福岡県久留米市生れ。劇作家・演出家。横浜国立大学卒。博士(比較社会文化、九州大学)。さいふうめい名義で『哲也 雀聖と呼ばれた男』の原案を担当。2006(平成18)年、『手塚治虫=ストーリーマンガの起源』でサントリー学芸賞を受賞。著書に『人は見た目が9割』『やっぱり見た目が9割』『ツキの波』など。

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