今、WEB業界入りする人が知るべき「30年の重み」 「若いから詳しい」「年長者は疎い」ではもうない

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だが当時、インターネット関係の就職先は「ヤフーやアスキーといった当時できたばかりのベンチャーか、NTTのような通信系の会社、もしくはNEC、IBM、富士通といったBtoB系のシステム会社くらい」で、まだまだ選択肢は限られていたという。

結果的に、森永氏は新卒でNTTに入社。2000年代に入るとさまざまな会社で1人1台のパソコンが与えられることが普通になり、ビジネスの世界でインターネットに参入する企業も増加していき、インターネット人材の採用も本格化。それを背景に、現在の会社に転職したのが2001年のことだった。

「27歳以上で社歴5年以上の求人が多いなかで、当時24歳の私が応募条件をクリアできていたのが博報堂と警視庁のサイバー犯罪対策系の人員募集でした。もともと生活者やネットユーザーに近い仕事がしたいと考えていたこともあり、先に博報堂で採用が決まったので、そのまま転職したという感じですね」

「ブランディング広告」を巡り生まれる齟齬

そうしてネット業界で20余年を過ごした森永氏。

テレビや雑誌、新聞広告が強かった時代から、デジタルマーケティングの存在価値が高まり、メディアプランニングの世界でマスとデジタルが同じ土俵で語られるようになった昨今だが、現場で生まれた新たな混乱も目撃してきた。その代表例が「ブランディング広告」を巡る、解釈の齟齬だ。

市場での自社のポジションの明確化やスペック・価格以上の付加価値付けを目的とする「ブランディング」だが、デジタルマーケティング出身/マスマーケティング出身で微妙に定義や捉え方が異なる言葉となっていると、森永氏は指摘する。

森永真弓(もりなが・まゆみ)/株式会社博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所上席研究員。千葉大学工学部を卒業後、NTTを経て博報堂に入社し現在に至る。コンテンツやコミュニケーションの名脇役としてのデジタル活用を構想構築する裏方請負人。テクノロジー、ネットヘビーユーザー、オタク文化研究などをテーマにしたメディア出演や執筆活動も行っている。自称「なけなしの精神力でコミュ障を打開する引きこもらない方のオタク」。WOMマーケティング協議会理事。著作に『欲望で捉えるデジタルマーケティング史』、『グルメサイトで★★★(ホシ3つ)の店は、本当に美味しいのか』(共著)がある。(撮影:今井康一)

「デジタルマーケティングのみに携わっている人は『ログで計測できて短期的に広告効果を発揮するパフォーマンス重視の獲得系広告』が広告の基本だと思っています。クリックできる広告が「普通の広告」なんですよね。デジタルマーケティングはクリックやコンバージョンを目的とする獲得系広告から始まっているので。なのでクリックできない広告は「それ以外」として一括りに捉えがちなんです。

一方で、マスマーケティングでは広くコミュニケーションマーケティングの中に獲得系広告のメニューがあって、さらにそこにクリックできる広告とできない広告があるという分類をします。広告の整理論が感覚的に違うんです。

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