学会が緊急声明!子どもの「急性肝炎」増加の実態 日本で7人、世界12カ国で169人が発症
「最初にイギリスで報告された後、ヨーロッパの別の国やアメリカなどから次々と報告が上がってきました。小児の急性肝炎はまれな病気であることを踏まえると、(169人という数字は)多いという印象です」
こう話すのは、今回、ステートメントを発表した日本小児肝臓研究会運営委員長の虫明(むしあけ)聡太郎医師(近畿大学奈良病院小児科教授)だ。20年以上にわたって子どもの肝臓器移植や診療に関わっている。
虫明医師は一方で、国内の報告に関してはこうも語る。
「報告されている7人は、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やALT(アラニントランスアミナーゼ)という肝機能をみる検査で、数字が標準値より上がっていて(500 IU/L)、かつA型からE型の肝炎ウイルスの関与が否定されているケース。実は、それだけでは情報が十分ではありません。海外で報告されているケースと同じなのか、しっかりと検証していく必要があります」
これは海外で確認されている169人についても同様で、全員が同じ原因で発症しているのか、注意深く見ていかなければならないという。
子どもにみられる急性肝炎の原因は…
肝臓は、さまざまな栄養の代謝にかかわったり、脂溶性の物質を解毒したり、脂肪の分解を助ける胆汁の消化を助けたりする、まさに”肝心かなめの臓器”だ。
その肝臓に何らかのダメージが加わり、炎症が起こった状態が肝炎で、成人では原因はアルコールとウイルスによるものがほとんど。残りは自己免疫疾患や薬の副作用によって起こる。ウイルス性肝炎の多くは、肝炎ウイルス(A型~E型)によるものだ。
一方、子どもにみられる急性肝炎は代謝疾患や自己免疫性が悪化したもの(急性増悪)と、サイトメガロウイルスやEBウイルスなどの感染によるものが半数ほどで、実は、「残りの半数ほどは、原因がわからない急性肝炎」(虫明医師)だという。
今回問題になった重症急性肝炎では、報告された子どもたちは腹痛や下痢、嘔吐、黄疸、肝機能の上昇などの症状を訴えている。だが、今回に限らず、ほかの急性肝炎でも同じ症状が見られるそうだ。
また、報告数の約1割にあたる17人に肝移植が必要だったという。これについても、「小児の急性肝炎の場合は、急に重症化して肝移植が行われることもあります。そのため、今回のケースに限らず、肝移植を想定して、移植の環境が整っている医療機関で診たり、連携を取ったりすることが望まれている」(虫明医師)という。
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