学会が緊急声明!子どもの「急性肝炎」増加の実態 日本で7人、世界12カ国で169人が発症

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日本感染症研究所も、「2021年以降、B型肝炎・C型肝炎の報告数に増加傾向は見られない。それら以外のウイルス性肝炎の症例の報告数はわずかに増えているが、大半が成人であり、その起因ウイルスのほとんどはサイトメガロウイルスや EBウイルスであり、アデノウイルスの報告はない」と記載。またアデノウイルス自体も流行していないとしている。

新型コロナとの気になる関係

もう1つ、今回の件で指摘されているのが、「新型コロナウイルス対策」との関連だ。日本と欧米で起こっていることが同じであるかわからない今、「あくまでも私見」としたうえで、小児科医として虫明医師は次のように考える。

「この2年あまりの間、子どもたちは以前なら当たり前のように感染していた風邪のウイルスにあまりさらされることなく成育しました。それで自然に身に付くはずの免疫があまりついていないのではと想像されます。

今はどこにでも消毒用のアルコールがあり、誰も彼もがマスクをしている。少しでも熱があれば保育園に預けられない状況です。以前は、幼稚園に上がるころには一通りワクチン接種も済んで、風邪も一通りひいていた。そういうことが経験できなくなったことで、コロナ以外のウイルスが流行したらどうなるんだろうと心配はしていました」

本来得られるはずの獲得免疫が、感染対策の影響で得られにくくなっている。その結果として現れたのが今回の子どもの急性肝炎なのかは、現時点ではわからない。だが、あるウイルスが爆発的に増えれば、何かしらの感染症が広がり、その一部が重症の肝炎につながる可能性は否定できない。

現在、新型コロナ対策で行われている子どものマスク着用について、熱中症の危険性が指摘されていることなどを受け、見直しをすることが検討されている。虫明医師はこう述べる。

「今の社会状況がこうなってしまっている以上、一気に以前の状況に戻すのは不可能ですし、多くの人は受け入れないと思います。ただ、過度な衛生環境を保つことばかりが大事ではありません。今後は、子どもたちの集まる環境とか、学校などでも徐々に感染対策を緩和していく方向に行くしかないと思います」

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