大京の大胆戦略、「ライオンズ依存」から脱却 マンション開発業者が高齢者施設にも食指

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「かがやきの季・中野南台」の室内

サ高住の今後の展開では、親会社であるオリックスとの協業も検討している。オリックス・リビングが運営する老人ホームと連携して顧客を相互紹介することや、オリックスのREIT(不動産投資信託)に大京のサ高住物件を組み入れることなどが、可能性としては考えられる。

商業店舗の誘致に課題

ストック事業の競争力強化を見据え、事業の再編も遂行する。ビル管理事業では、3月1日にオリックス・ファシリティーズを存続会社として、オリックス・エンジニアリングを合併させる。これにより、売上高500億円規模のビル管理会社となる。

工事事業では、同じく3月1日に大京建設と穴吹建設を合併。こちらも全国で首位級のマンション修繕工事会社となる。また、マンション管理事業では、穴吹コミュニティを存続会社とし、そこにグランドアメニティを4月1日付で併合する。「事業集約によるスケールメリットを生かし、顧客の多様なニーズに対応していきたい」と、会社側は説明する。

ただ、ストック事業の強化においては課題も残る。たとえば、賃貸事業の増強のため、マンションと商業施設が併設された複合ビルの開発を進めるにしても、「大京は三井不動産などの大手デベロッパーに比べて、テナントの誘致力が弱い」(業界関係者)との指摘がある。複合開発の分野でオリックスとの連携を深めることでその弱点を補う方針だが、どこまで実績を積み上げられるかは不透明だ。

全体の業績においても、2015年3月期は営業利益190億円計画(前期比4.8%増)と、伸び悩む見込みだ。消費増税の影響で修繕工事が軟調に推移していることなどが原因。2016年3月期も、リーマンショック前に土地を仕入れた採算の悪い分譲マンションが計上されるため、利益に浮揚感はなさそうだ。

目論みどおり、ストック事業を“大黒柱”に育てることで利益成長のカーブを描けるか。独自の路線を貫く大京の今後を占う意味で、今回打ち出したサ高住事業は試金石となるだろう。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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