アメリカ「メンソールたばこ禁止」に踏み切る理由 これまでにない「厳しい規制」に評価の声も
たばこ業界はロビーイングによって激しい抵抗を繰り広げていた。メンソールたばこでアメリカ最大の販売シェアを持つレイノルズの親会社ブリティッシュ・アメリカン・タバコの最高マーケティング責任者キングズリー・ウィートンは、たばこのリスクを下げるにはメンソール禁止よりも有効な手法がいくつもとあるというのが同社の見解だと語った。
公衆衛生の専門家らは、メンソールたばこは黒人向けに積極的なマーケティングが展開され、深刻な健康被害を生んでいると指摘している。アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、アメリカでは黒人男性の肺がん率が最も高い。
アメリカ黒人地位向上協会(NAACP)会長のデリック・ジョンソンは、今回の禁止提案を「正義の勝利」と呼んで評価した。
「メンソールたばこは、私たちの子どもたち、親たち、兄弟姉妹たちを殺し、生活を破壊してきた」と、ジョンソンは声明で述べた。「メンソールたばこという死の嗜好品と何十年にもわたる戦いを繰り広げてきたアメリカの黒人にとって、今日は勝利の日だ」。
ティーンの喫煙の入り口にも
喫煙率はパンデミックが原因で2020年に微増となったものの、全体としては過去20年にわたり減少傾向をたどっている。それでも、喫煙が原因で死亡する人は毎年48万人と推計され、喫煙を始める人の間ではメンソールたばこの人気が高い。ティーンエイジャーの喫煙者の約半数が、メンソールたばこを吸っているという調査結果もある。
そのため、メンソールたばこを市場から排除できれば、喫煙率のさらなる引き下げにつながると期待されている。メンソールたばこを禁止したカナダの経験がアメリカにも当てはまるとすれば、130万人が喫煙をやめ、潜在的に何十万人という人々が喫煙で寿命を縮めなくてすむようになると、国際たばこ規制政策評価プロジェクトの主任調査官ジェフリー・フォンは語った。
メンソールたばこの禁止は「避けられる死や病気の最大の原因となっている喫煙を減らすうえで、極めて画期的な政策となる可能性を秘めている」という。
メンソールの電子たばこ(加熱式たばこ)は今回の禁止対象には含まれないが、FDAは現在、販売継続を許可するかどうかを見極めるため、アメリカで販売されている全ベイピング製品の調査を進めている(ベイピング製品の販売が開始された当初、FDAには同製品に対する規制権限がなかった)。