静岡リニア、知事と副知事「確執」がついに表面化? 川勝最側近も辞任、いよいよ「裸の王様」状態に

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当時、JR東海は「東京電力へのアプローチは難しい」と回答していたが、今回の田代ダム取水抑制案について、JR東海は東京電力の内諾を得た上で、水利権を認める国交省中部地方整備局と調整を進めていることを明らかにした。

静岡県地質構造・水資源専門部会であいさつする難波喬司副知事(2022年4月26日、筆者撮影)

難波氏は、次回の県専門部会でJR東海の説明をちゃんと聞くつもりだったのだろう。ところが、3年近く前の染谷市長の提案が頭にあったのか、一方的に水利権の譲渡と勘違いして、川勝氏は「JR東海は関係のない水利権に首を突っ込んでいる。他人の家に土足で上がり込んできて水を寄越せと言っているようなものだ」などと厳しく批判、「突然、水利権の約束を破ることはアホなこと、乱暴なこと」などと田代ダム取水抑制案を否定してしまった。

26日の県専門部会で大石教授は「水利権の目的外使用は許されない」と注意を促した。2003年大井川農業用水の工業用水への目的外使用(ヤミ転用)が明らかになり、国交省は水利権を持つ農水省関東農政局に是正措置を指示した。ただ、今回の場合は、東京電力が自主的に取水を制限して大井川に放流するものであり、2003年の場合と事情が違う。水利権に絡むのかどうかは微妙な状況だ。

というのは、静岡県大井川広域水道企業団は毎秒2立方メートルの水利権を有するが、実際には毎秒1.5立方メートル程度しか取水せず、残りの0.5立方メートル分を大井川に放流している。だからと言って、大井川広域水道企業団が水利権の目的外使用をしているわけではない。理屈上は、今回の田代ダム取水抑制案も同じである。にもかかわらず、川勝氏は田代ダム取水抑制案を否定してしまった。その上、川勝氏は山梨県の懐事情を思いやり、田代ダムの取水が抑制されると早川町に交付される電源立地交付金に出かねないことも否定の理由に挙げた。

山梨県知事の反応は?

田代ダムから山梨県へ流出する河川水は、大井川流域住民の「水返せ」運動の象徴だった。1975年の山本敬三郎静岡県知事の東電との交渉に始まり、斉藤滋与史、石川嘉延の歴代知事は、電力会社との「水返せ」で先頭に立った。それに対して、2015年の田代ダムの水利権更新に当たって川勝知事は「水返せ」を求める声を上げなかった。当時も早川町の電源立地交付金を理由に挙げていた。

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難波氏との意見の食い違いだけでなく、今回は、流域の島田市長、焼津市長らもJR東海の提案を評価している。しかも、長崎幸太郎山梨県知事までも「解決のカードになることを強く期待する」と発言したことで、川勝氏の立場はなくなった。

3月末、知事の最側近として時には直言も辞さなかった篠原清志知事戦略監が、県議会で予算案を否決され、辞職に追いやられた。その篠原氏に続いて、難波氏が退任することで、川勝氏に直言する幹部はいなくなるだろう。

今後、川勝氏の“裸の王様”状態が際立ち、リニア静岡問題解決の道のりはさらに険しくなる恐れがある。

小林 一哉 ジャーナリスト

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こばやし・かずや / Kazuya Kobayashi

1954年静岡県生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。2008年退社し独立。著書に『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』(飛鳥新社)等。

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