静岡リニア、知事と副知事「確執」がついに表面化? 川勝最側近も辞任、いよいよ「裸の王様」状態に

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JR東海の説明に対して、難波氏は「(2011年5月の国土交通省の)整備計画決定時のことであり、専門部会で問題視しない」と明言した。地質構造の問題によってJR東海の南アルプストンネル工事が難航することはあっても、大井川下流域の水環境への影響とは関係ないからだ。しかし、事務方から川勝氏にちゃんとした説明がないのか、川勝氏は28日になってもルート計画決定と地質調査を問題にしていくと宣言した。

JR東海の「工事中の全量戻し案」を否定した川勝平太知事(2022年4月28日の会見、筆者撮影)

背景には、川勝氏が難波氏を事務方トップの副知事に再任せず、リニア問題を担当する県理事(部長級)へ“格下げ”を決定したことがある。川勝氏は県理事に就く難波氏の任期は水環境問題の決着までの期間であると明言する。難波氏が事実を直言することで川勝氏との確執が取り沙汰され、両者はほとんど口をきいていない状態という。それがリニア問題の議論に大きな影響を及ぼしている。

ルート計画決定と地質構造の問題だけでなく、田代ダム問題でも難波氏と話していないことがはっきりとした。川勝氏は25日、「工事中の全量戻し案は専門部会でしっかりと仕切ってもらう」と発言したにもかかわらず、28日には「JR東海案は全量戻しにならない」と一蹴した。

田代ダムの取水を抑制

東京電力の田代ダムは水問題に大きな影響を与えている。国の有識者会議は昨年12月、リニアトンネル工事期間中(10カ月)に最大500万立方メートルが山梨県へ流出したとしても、「下流域の水環境への影響はほぼなし」という結論を出した。これに対して、川勝氏は「水1滴も県外流出は許可できない」と強硬な姿勢を崩さず、今年1月20日開催の大井川利水関係協議会で流域首長らは工事中の全量戻しを求めた。

この要請に対して、JR東海は南アルプストンネル計画の直下に位置する田代ダムの取水を抑制し、大井川に放流する案を示した。

田代ダムから毎秒4.99立方メートルの水が山梨県の田代川第一発電所、第二発電所に使われ、同県の早川に流れていく。単純に計算すれば、日量43万立方メートル、月量1300万立方メートルという膨大な水が静岡県から流出している。これに比べて、リニア工事における10カ月間で最大500万立方メートルの流出など微々たる値である。

もともとは、神戸大学都市安全研究センターの大石哲教授が2019年8月の県専門部会で「トンネル工事中に西俣非常口から大井川に戻す水量分を田代ダムで取水されないようにして、大井川にそのまま流すべき」と発言した。この発言に対して、染谷絹代島田市長は「場合によっては東電から水利権を買い取る方法もある」などと提案、田代ダムの取水抑制に前向きな姿勢を示した。

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