3メガのアジア競争、個人取引で三菱先陣 アジア戦略を加速させるが、3行に温度差

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三井住友銀行(SMBC)もアジアでの個人取引拡充を課題に掲げる。SMBCは14年5月、「アジアでのマルチフランチャイズ戦略の加速」を、中期経営計画の重点テーマとした。企業取引だけではなく、個人も含めたマルチな顧客層にアプローチしていくという戦略だ。

特にインドネシアには約1500億円、40%を出資している年金貯蓄銀行BTPNがある。ここを通じて「個人のマス層の取引を拡充していく」(SMBC新興国戦略本部の大谷賢紀・調査・企画グループ長)考えだ。ただ、BTPNの貸出金の8割は年金受給者向けローンという、他国にはあまりない特殊なもの。公務員、退役軍人、国営企業従業員の公的年金を担保に、融資している。資金使途としては、実際には年金受給者の子どもが商売を行うための資金など、事業性融資も少なくないという。また、BTPNへの出資は4割にとどまる。現状、SMBCが行っているサポートは資金調達ぐらい。国際金融公社(IFC)と協力して、低利で資金調達できるよう支援している。一緒になって個人向け営業をしているという状況ではない。

インドネシアとともにマルチフランチャイズ戦略を展開し、個人取引の拡充を進めようとしているのがベトナムだ。エグジムバンクに約230億円、15%出資している。日本の住宅ローン担当者をエグジムバンクに派遣し、ベトナム人のニーズに合うようカスタマイズして、住宅ローンを強化している。

みずほは企業取引中心

一方、みずほ銀行がアジアでの個人取引拡充に取り組むのは、まだ先になりそうだ。いま力を入れているのは日系企業と非日系現地企業との取引拡大。10年度から「スーパー30戦略」を掲げ、米州・欧州・東アジア・アジアオセアニアの4地域それぞれで、非日系の主要約30企業集団を選定。アジアでもタタグループなどの大手に対し、経営トップとのリレーションを構築し預金獲得などの目標を定め、営業を強化している。

アジアでのネットワーク充実は「現地拠点の設置と現地銀行との提携の組み合わせが中心」(みずほ銀行の国際業務部)。銀行出資はベトナム、韓国、中国での3社のみで、いずれも15%以下。「出資の機会があるか、出資がわれわれの戦略に合っているかを、その都度考えていく」(同)。

タイでは14年11月、タイ最大の営業拠点網を持つサイアム商業銀行と提携した。同行が邦銀と提携するのは今回が初。出資の機会をうかがいつつも、足元では拠点設置と提携でアジアのネットワークを強化しているのがみずほだ。

貸出金利が下げ止まらず、国内収益の低迷が続くメガバンク。成長を狙ってアジア進出を進めるが、その方向性は三行三様だ。個人取引にいち早く深入りしたBTMUに一日の長があるが、まだ緒についたばかり。今年はさらなるアジア展開の動きが加速することになるだろう。

(「週刊東洋経済」2015年1月24日号<1月19日発売>掲載の「核心リポート02」を転載)

福田 淳 東洋経済 記者

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ふくだ じゅん / Jun Fukuda

『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て編集局記者。

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