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対露戦略は変わる?決選目前「仏大統領選」の実情 4月24日投票、マクロンvsルペンの大激戦

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  • 安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)
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そのマクロン氏はNATOを最大限重視し、NATO改革にも熱心だ。一方、ルペン氏はNATOの統合軍事機構から脱退する方針を主張しており、「ウクライナでの和平成立後、NATOはロシアに戦略的に接近すべきだ」として、経済面、外交面でロシアとの対立を続けることはフランスにとって不利益との考えを示している。

国民連合は前身の国民戦線の時代にナチスによるジェノサイド(集団虐殺)はなかったなどの過激な主張もあり、フランスの金融機関から政治資金の貸し出しを拒否されている。そのため、ロシアから政治資金を調達し、借金を返している事実もある。この件でルペン氏は「ロシアの影響はまったく受けていない」と断言している。

ロシアのプーチン大統領との親密な関係疑惑に対しては、2019年8月のフランス開催の先進7カ国首脳会議(G7)直前に、マクロン氏がフランス南部の大統領の別荘にプーチン氏を招待したことに触れ、「なぜ、あのような行動を批判しないで私を非難するのか」と憤慨している。ロシアとの関係はフランスを最優先に考える立場からで、NATOや欧州連合(EU)より国益重視を主張している。

それはロシア産天然ガスや石炭の輸入を制限しようという流れの中で、原子力発電の依存度が高いフランスは有利なはずなのに、原発ゼロをめざすドイツにEU内で振り回されているとして「ドイツにフランスの原子力産業を破壊させない」と訴えており、ドイツとの経済、軍事協力は全面的に見直す必要性を主張している。

これら一貫した国益最優先の主張は、ルペン氏が強調している「今回の選挙はグローバリストのマクロン氏か、国家の主権を取り戻す私のどちらかを決める選挙だ」との認識に明確に表れている。

コンサルへの巨額支出が批判のやり玉に

マクロン氏のグローバリストぶりは、選挙戦で浮上したマクロン政権がアメリカのコンサルティング大手、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどに昨年、過去最高の10億ユーロ(約1350億円)を支払い、経済政策のアドバイスを受けたことに表れている。

急進左派のメランション氏は選挙戦中「私はマッキンゼーとは何の関係もない」と訴え、フランス人が一般に嫌うアメリカ型金融資本主義にマクロン氏が染まっていると批判した。ルペン氏も同じような批判を繰り返し、左派票を取り込みたいマクロン氏には逆風となっている。

今のところ、マクロン氏が再選されるとの予想が大勢を占めているが、フランス人は過去に大革命を起こした実績もあり、専門家やメディアが予想できない投票行動をとる可能性も指摘されている。

ただ、どちらが当選したとしてもロシアによるウクライナ侵攻がもたらしたヨーロッパの枠組みの大幅な変更で、フランスを取り巻く政治状況の不確実要素は増しており、フランスが過去にない変化のときを迎えていることは確かといえる。

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