対露戦略は変わる?決選目前「仏大統領選」の実情 4月24日投票、マクロンvsルペンの大激戦

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今回の大統領選は右派の選挙といわれ、予想通り左派は敗北したが、決選投票を戦う2人の候補は左派票の取り込みに必死だ。第1回投票で3位につけた急進左派、不服従のフランスを率いるメランション氏は第1回投票後、「1票たりともルペンに投票しないように」と呼びかける一方、マクロン氏への投票には言及していない。

労働者や貧困層の多いメランション支持者の中には、思想信条でメランション氏を支持していたわけではなく、生活改善に期待した有権者が多い。彼らの中に庶民に寄り添うルペン氏に投票する人がいることも指摘されている。社会党はマクロン氏に投票するよう呼びかけているが、左派の反マクロン政権の黄色いベスト運動参加者らは、マクロン氏に投票する可能性は低く、棄権が増えると予想されている。

決選投票で注目される浮動票の行方

一方、第1回投票直前の世論調査で、投票者を決めかねている有権者が3割を超えたことから、浮動票の行方も注目されている。

前回選挙では「とにかく極右の大統領を生むわけにはいかない」と反ルペンの一大キャンペーンがメディアを中心に巻き起こったが、今回は「2024年のパリ五輪の時に極右の大統領ではまずい」との声も聞かれるが、左派や浮動票がどこまでマクロン氏に流れるか疑問視されている。

本来、長年社会党支持者だった筆者のフランス人女性の友人は、失業率が下がらないことに失望し、前回はマクロン氏に投票したが、今回はルペン氏に投票するという。

「政治家経験の浅い、若いマクロンへの投票も賭けだったが、そこまで給与も上がらず購買力も伸びなかったので、今回はルペンに賭けてみたい。大統領になれば愚かなことはしないでしょう」と彼女は語る。

彼女の注目点は、今回の選挙で最も注目度の高い年金改革で、年金支給年齢で引き上げのマクロン氏と引き下げのルペン氏は真逆。「年金支給年齢引き下げは50代の私には重要なテーマ」と彼女はルペン氏支持の根拠を挙げる。さらに「こんなにマナーや治安が悪くなったフランスは初めて。移民がフランスを破壊していることは誰もが知っている」という。ルペン氏は移民を減らすための政策で国民投票を公約している。

マクロン氏はウクライナ危機で株を上げたとも言われているが、ウクライナのゼレンスキー大統領に頻繁に電話連絡し、世界でヒーロー化しているゼレンスキー人気にあやかろうとしていると批判されている。

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