「東京一極集中が日本を救っている」といえる理由 「東京が潤えば地方も栄える」の仕組みを解説

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先ほど、東京にはヒト・モノ・カネ・情報が集積していると述べましたが、東京は、いわゆる大企業が集積していることでも知られています。

たとえば、「フォーチュングローバル500」(2020年)のデータによれば、世界で売上高上位500社に入るグローバル企業のうち、東京都に本社を置く企業は37社。これは北京市55社に次ぐ世界第2位の多さであり、3位のパリ市、ニューヨーク州16社を大きくリードしています。

東京の税収はスウェーデンの国家予算並み

また、日本の従業員数100人以上の事業所所在地を見ると、全体の37.0%が東京都に集まっています。以下、大阪府9.2%、愛知県5.9%、神奈川県4.7%の順。東京圏1都3県を合計すると、日本全体の46.9%が東京圏に集中している計算になります。

それだけに、東京都が毎年得ることのできる法人税などの税収は膨大であり、例年の予算規模約15兆円はスウェーデンの国家予算を上回ります。東京都が受け取るこうした莫大な税収の一部は、実は地方へも還元されます。本来、「東京などの大都市」と「地方」と「中央政府」の関係は、以下のようなものでした。

○「地方」は「東京などの大都市」に労働力となる「人」を提供
○「東京などの大都市」は企業による経済活動で税収を得て、「中央政府」に税を納付
○「中央政府」は東京などが納めた税金から「地方」に地方交付税などの補助金を分配

ところが、1990年代前半にバブル経済が崩壊してから、この3者の関係は大きく変化しました。ごく大雑把にいえば、企業の業績悪化や不良債権問題で東京など大都市の税収が激減。中央政府の税収も激減しましたが、地方に補助金を支給しないと地方経済が破綻してしまうため、赤字国債を大量発行して急場をしのぎます。

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しかし、そんな自転車操業がいつまでも続けられるわけもなく、中央政府は「平成の大合併」で全国3232市町村を1727市町村にまで削減。補助金の総量を減額すると同時に、「地方法人特別税」の制度を導入。制度の変更もありながら、現在は、東京都の法人事業税、法人住民税の税収のうち、9000億円超が地方に再分配されています。

このようにして、東京が一極集中によって得られた富は、直接的または間接的に、地方の各都市に配分されています。つまり、東京が潤えば地方も栄えるのです。

市川 宏雄 明治大学名誉教授

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いちかわ ひろお / Ichikawa Hiroo

明治大学名誉教授/帝京大学特任教授/一般社団法人 大都市政策研究機構・理事長/特定非営利活動法人 日本危機管理士機構・理事長。

1947年東京都生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、ウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了。1997年、明治大学政治経済学部教授に就任。専門は都市政策、危機管理、テレワーク、次世代政策構想。「世界の都市総合力ランキング(GPCI、森記念財団)」主査。『東京一極集中が日本を救う』(ディスカヴァー携書)、『東京2025』(東洋経済新報社)、『山手線に新駅ができる本当の理由』(KADOKAWAメディアファクトリー新書)など著書多数。

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宮沢 文彦
みやざわ ふみひこ / Miyazawa Fumihiko

平成元年 早稲田大学商学部卒業後、ユニバーサル証券(現 三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。平成7年にレーサム・リサーチ(現 レーサム)に入社、営業部長として活躍し不動産コンサルティングを行う。平成11年4月に株式会社ボルテックスを設立。公認 不動産コンサルティングマスター認定者。

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