「がんでもおしゃれを諦めない」デザイナーの矜持 姉が語る30代の妹を突き動かした強い「思い」
「スタッフは、会社やナオの活動、手がけてきたブランドについても伝わる本があるといいなと思っていた。妹は入院中とか、重たい本が読めない人も疲れない、どこのページからも読めるような本がいいと。そして私は自分の2019年の長期入院の経験から、誰しもいつどうなるかわからないので特に妹の場合、彼女自身の活動がちゃんとわかる虎の巻がいい、と思っていました。
これがあるのとないのでは、これから先の会社や活動が変わったと思います。今後、チームや仲間づくりをする上でも、彼女の考えや、してきたことが可視化されているものがあるのはすごく大きい。創業者の考え方がわかるものがあるとやっていきやすいと思います。
だけど、本人がいたらもっと違う形になっていたかもしれません。ただ、途中までいたけど、途中からいなくなってしまった中で作り上げた本としては、彼女が大切にしていたものや、考えていたことが伝わる内容になったかな」
母が娘の意志を引き継いだ
「おわりに」を書いているのはいしいさん、中島さんの母親だ(「中島ナオの母より」と書いてある)。長年、アパレルを手がける大手小売業に勤めていた中島さんの母親は2021年3月に定年退職。その翌月に中島さんを亡くし、その月末にナオカケルの代表取締役に就いている。
「Canae」を始める時には、母親にもよく相談していたという中島さん。いしいさんも、母親が徐々に運営に携わっていくのが理想だと考えていたが、その交代は突然だった。が、今後は「中島さんが実現したかっこと」を母親の力で実現していくことになる。
「例えば、『N HEAD WEAR』はメガネみたいにしたいと言っていました。メガネってかつては目の悪い人の矯正器具でファッションではなかった。それが長年かけて目が悪くない人でもファッションとして身につけるアイテムになった。今ではメガネをかけているからって『あの人、目が悪いんだ』と思われなくなっています。
それと同じように、『あの人、髪がないからあの帽子をかぶってるんだ』じゃなくて、『髪があってもなくてもあの帽子はかぶりたいよね』と言われるようになりたい。最終的には隠しても、隠さなくてもいい、というふうになればいいなという思いが妹にはあったので、今はそれを実現したいと思っています」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら