「がんでもおしゃれを諦めない」デザイナーの矜持 姉が語る30代の妹を突き動かした強い「思い」

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「がんになると本当におしゃれなものが少なくて。ファッションにしても、何にしても医療色が強いというか。確かにがんの方向けのお化粧の仕方とかスタイルブックはあったのですが、妹としては『どれも違う』みたいな。

治療が始まり、体調を気遣うレシピブックをいろいろ調べてみましたが、これもまた医療色が強いものばかりで、自分たちがこれまでに好んでいたような、『わー、美味しそう!これ作ってみよう』って思えるようなレシピブックもなくて、がんを取り巻くものに『これ素敵!って思えるものが少ないよね』と話していた記憶があります。

そういう中で、妹がブログやSNSで発信しはじめた頃に、2人で話したのは同情を集めるのではなくて、いかに『私たちの抱いていた違和感に共感してもらえるか』ということでした。がんではない方も含めて、たくさんの方から受け入れてもらえるものじゃないと、長く続けられないというのはお互いの共通認識でした。がんになってさまざまな活動をしている人はたくさんいるけれど、継続することはとても大変そうだよね、と話していました。

どんな活動でもそれが『自分ごと』にならなければ、続かなくなってしまう。それってもったいないよね、ということで彼女自らが共感を持ってもらえるようなアイコンになろうとしたのだと思います」

がんだからってすべてをさらけださなくてもいい

「ただしそれにはバランスが必要でした。妹の活動は華やかに見られる場面も多かったのですが、同じ病を抱えた人を傷つけないように気をつけていました。

もちろん、闘病生活などを伝えるということもできましたが、妹には『がんであることを前提に情報発信する上で、すべてをさらけ出さなくてもいいのではないか』というこだわりがありました。

多くの人に共感を得ながらも、病気を前提にしないという細かいチューニングをしながら発信していたと思います。経営者として、時間をかけずに、お金をかけずに、どうしたらどんどん広がっていくか、というのはよく話し合っていました」

「N HEAD WEAR」をかぶる中島さん(写真:木寺 紀雄)

そうした中で生まれたのが、「N HEAD WEAR」や「Canae」だった。どちらも、ファッション性が高く、一般的なショップで売っていてもまったく違和感がない。それどころか、病気の人のことも考えてつくられた機能は、病気にかかっていない人にとっても使い勝手がいい。

その後、2019年2月に立ち上げたdeleteCは、中島さんにとって新たなチャレンジだった。小国氏が講師を務める勉強会で中島さんが声をかけたのが始まりだった。本の中で小国氏は「圧の強い人だった」と振り返っているが、話す中で「この人と伴走するのは単純に面白いかも」と思ったと語っている。deleteCの目的は明確だった。

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