リクルート、動き出した7000億円の買収戦略 豪州の人材派遣2社獲得で現地2位に
世界ナンバーワンに向けたM&Aが、本格的に動き出した。リクルートホールディングスは1月14日、豪州の人材派遣会社2社の買収を発表した。総額360億円を投じ、4月中旬メドで買収を完了する見通しだ。豪州の人材派遣分野で、シェア2位のチャンドラーマクラウド社を283億円で、同シェア5位のピープルバンク社を67億円で全株取得する。後者はITエンジニア領域に特化した会社だ。リクルートHDにとって初の豪州でのM&Aであり、買収後は豪州でのシェアが合算7%程度となり、首位企業の8.6%に次ぐ規模となる。
規模の成長と利益計上のバランスが課題
昨年10月に上場したばかりのリクルートHDだが、峰岸真澄社長は「今後3~5年の投資余力は7000億円ある」と公言し、海外企業のM&Aを積極化する方針を掲げてきた。すでに人材派遣分野では2010年に米CSIカンパニー社を約28億円で、11年には米スタッフマーク社を約240億円で、欧米で展開するアドバンテッジリソーシング社を約330億円で買収している。これらの実績を通し、「国内での人材派遣事業で確立した経営手法が海外でも応用可能」と同社は胸を張る。
峰岸社長は「2020年に人材領域で世界ナンバーワン」を掲げ、すでに複数の大型買収を手掛けている。ただし14年に実施したM&Aは、子会社によるモバイル求人募集大手の米社など少数にとどまっていた。株式上場を控えていたことなどがその理由だろう。今後は再び活発化することが予想される。まだ投資余力は6000億円超も残っている。
今期の売上高は前期比8.3%増の1兆2900億円、営業利益は同3.0%増の1210億円を見込んでいる。すでにM&Aで海外売上高を約3000億円増やしてきたが、今回の2社買収により売上高1820億円が新たに上積みされることになる。着実に成長戦略を歩んでいるが、懸念材料は営業利益の成長だ。
同社は経営指標でEBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)を重要視している。中期的に5%以上のEBITDA成長率を掲げるが、これは買収企業が増えるほど成長が期待できる数値である。一方で営業利益では、買収企業ののれん償却額が負担となるため当然、成長が小幅となることは避けられない。上場企業となった今、攻め一辺倒で営業利益の成長を犠牲にすることは株式市場から歓迎されるはずもない。今後のM&A戦略で、どう成長バランスをどう採っていくのかも新たな課題となりそうだ。
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