常時スマホ時代に「頭に記憶すべきもの」は何か スマホだけでは成り立たない「記憶術」とは?

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このように「コンピューター」と「頭」には、それぞれ記憶術の「メリット」があるが、「デメリット」もある。

そこで、この「デメリット」をそれぞれで補っていくことができれば、大きく「知肉」につなげることができる。つまり、「頭の中に記憶するもの」と「脳の外側であるコンピューターへ記憶するもの」を区別するのである。

【結論】「情報はコンピューター保存」「概念を頭に保存」と使い分ける

コンピューターは「記憶容量が多く、いつまでも正確に記憶できる」が、「知肉」に必要な「概念」を作り出すことができない。しかし、頭は「記憶容量が小さい」が「概念」を作り出すことができる。

つまり、コンピューターは「さまざまな情報」を記憶し、頭は「さまざまな概念」を作り出し記憶するということで、記憶の仕方を区別する。そうすることで、お互いの「デメリット」を補い合うことができるその結果、「知肉」に変えていくことができるのだ。

実際、わたしも「情報」的なものは「コンピューターへ保存」し、「頭の中に保存」するのは「概念」を中心にしている。そうすることで、頭をいつも「クリアな状態」にして保つことができ、さまざまなアイデアを思いつきやすい「土壌」を整えておくことができるのだ。

「コンピューター」だけに頼らない記憶術を

「読む力」を駆使して、さまざまな知識や情報を集めることは重要である。しかし、その集めた知識や情報を「知肉」にできるかどうかは、知識や情報の記憶の「やり方次第」である。

いまのような「常時スマホ時代」、スマホがないと成り立たないことも多くなっている世の中だが、すべての記憶をスマホに頼ってばかりでは、「知肉」をつくることはできない「人間の脳」の記憶も必要不可欠なのである。

みなさんも、「コンピューター」と「頭」へ記憶するものをうまく使い分けるスキルを身につけてほしい。そうすることで、みなさんの「知肉」は、どんどん素晴らしい形で育っていくはずだ

佐々木 俊尚 作家・ジャーナリスト

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ささき・としなお / Toshinao Sasaki

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数。

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