ユーロ危機再び?欧州を覆う「日本化」の暗雲 要注目はECB理事会とギリシャ総選挙

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独フランクフルトにあるECB本部。1月22日の理事会で量的緩和に踏み出すとの見方が強まっている(写真:ロイター/アフロ)

不安要素はドイツの出方だけではない。ECB理事会の3日後に当たる25日には、ギリシャの総選挙が控える。

事前の世論調査では、債務減免や反緊縮財政などを主張する野党、急進左派連合(シリザ)が優勢。同連合は、第一党の座についてもユーロ圏に残留する意向を明らかにしている。

それでも、マーケットでは「同国の財政再建を支援する欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)、ECBのいわゆる“トロイカ”との交渉いかんでは、ユーロ離脱の可能性もありうる」などと、「ギリシャ発のユーロ危機勃発」シナリオへの警戒感が再燃している。

ECBのクーレ専務理事はフランスのニュース専門チャンネル「フランス24」のインタビューで、「金融政策の決定はユーロ圏全体のためのものであり、ギリシャはユーロ圏の小さな一構成国にすぎない」などと言明。理事会の判断にはなんら影響を及ぼさないとの考えを示した形だが、新政権が財政再建路線を放棄した場合にもギリシャ国債を買うのはつじつまが合わない。

「原油価格下落は本来、欧州経済にはプラスに働くはずであり、その効果を見極めたいというスタンスの勢力もいる」(ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり上席研究員)。買い取り実施はギリシャ選挙の後になりそうだ。

もちろん、ECBが量的緩和にカジを切っただけで、ユーロ景気がただちに上向くわけではない。市場には「1兆ユーロの国債買い取りがデフレ回避には必要」との声もある。

「恐怖指数」は警戒圏に

ユーロ加盟国は外交・政治面でも新たな困難に直面した格好だ。フランス・パリでの同時テロをきっかけに各国で右傾化が一段と進行すれば、社会不安が拡大しかねない。それによって、政権の基盤が脆弱になるおそれもある。

投資家のリスク許容度を反映した指数である米シカゴオプション取引所算出のボラティリティインデックス(VIX、別名「恐怖指数」)は、警戒圏とされる20ポイントを上回ってきた。世界中を揺るがした2010年のユーロ危機。マーケットは“いつか来た道”への逆戻りの動きを織り込み始めたようにも見える。

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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