「50代で年収1000万円」は日本人の中でどの位置か 平均値や中央値だけを見てもイマイチわからない

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以上を考えると、50代で世帯所得1000万円以上の世帯とは、世帯主の勤務先所得がかなり多く、それに配偶者の勤務先所得が加算されている場合が多いのではないかと推測される。

50歳代の所得(再分配前)によって、世帯を次のようにグループ化することが可能だ(学歴との関連は、筆者の想定。実際にはこうならない場合もあるだろう)。

4つのグループに分けられる

第1グループ:世帯主の所得だけで年間1000万円を超える。これは管理職になった場合に相当する。同年齢層の総人口に占める比率は1割程度と考えられる。大学卒業者が同年齢層の5割とすれば、その2割程度になる。

第2グループ:配偶者の所得と合わせて、年間1000万円を超える。これは、同年齢総人口の1割程度。大学卒業者の2割程度になる。

第3グループ:50歳代の年収の中央値は、ほぼ500万円である。したがって、世帯所得で年間500万円から1000万円が同年齢総人口の3割(=5割-2割)程度いることになる。これは、大学卒業者の6割程度にあたる。

第4グループ:世帯所得が500万円未満。これは同年齢総人口の5割程度。高卒程度に相当する。

以上をまとめると、図表のようになる。

そして、60歳代後半になると、ほとんどの人の再配分前所得がゼロになる(つまり、所得は年金だけになる)。

なお、以上では世帯主を男性と考えたが、そうでない場合ももちろんある。

また、ここでの分析は、所得という指標のみに着目したものである。人間の価値が所得だけで評価できないことは、言うまでもない。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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