銃撃受けたシャルリー、最新号発行の舞台裏 14日発売号は300万部を販売
ジャーナリストは悲しみと戦いながら、辛らつなユーモアを発揮した。漫画家は、オフィスでの恐ろしい出来事の後で仕事を続けるのがどれほど大変か、話しをしながらもスケッチを描いた。ほかの人たちは怒りの中で殺人者を激しく非難した。「こんなときに、彼らは面白いものなどつくれるのか」、疑問が浮かんだ。
「われわれは笑う以外のやり方を知らないから」と、ビヤールは言った。銃撃のあった日、彼は休暇中だった。
同紙での虐殺は、世界中で、セキュリティ面の過失やイスラム過激派などについての議論を巻き起こした。何百万人ものサポーターが「私はシャルリー」のスローガンを掲げた。しかし、エッフェル塔を望むすばらしい景色の最上階の会議室にいたのは、普通のジャーナリストや漫画家たちの集団だった。涙を流し、軽食をつまみ、笑い、ビル内での喫煙に関するルールを破り、次の号を発行するまで持ちこたえようとしている人々だった。
通常の50倍にあたる300万部を発行
「追悼号ではなく、通常版を発行することにした」と、ビヤールは言った。9日、3時間にわたる感傷的なスタッフ・ミーティングが拍手をもって終了した時だ。同紙にはケータリングでスモークサーモンとサンドイッチ、クリームたっぷりのデザートが届けられた。多数の私服警官が外に立って警戒を続けていた。ジャーナリストらは待機していた。ル・モンド紙から寄付された5台のデスクトップ・コンピュータが、円形のガラステーブルの上に設置されていた。財務的な問題を抱えていた同紙には、銃撃のあと寄付が集まり続け、基金も設定された。「私はシャルリーを助ける」と。
ニュースルームに活気が戻った9日午後、ビヤールはその思いを語った。「彼らは漫画のキャラクターを描いていた人たちを殺した……。それだけだ。あいつらがやるのは、それがすべてだ」と、ビヤールは侮蔑的な言葉を強調のために使って言った。
新聞を発行する作業は手間がかかる。オフィスは犯罪現場として封鎖されているので、オフィスから必要な物を取り寄せるにも裁判所に依頼文書を提出しなければならない。リベラシオン紙の協力を得て、シャルリー・エブドは、通常の発行部数が6万部であるのに対し、最新号を300万部発行する。加えて、同号は複数の言語に翻訳される予定だという。
最新号の内容でひとつ明らかなものがある。それは亡くなったスタッフの過去の作品を掲載し、記憶を留めておくことだ。同紙では殺害された4人の漫画家、編集長のステファン・カルボニエ、ジャン・カビュ、ベルナール・ヴェーラック、ゲオルグ・ウォリンスキーの絵を掲載する。また、コラムを執筆していたエコノミストのベルナール・マリス、精神科医のエルサ・カヤットら、ほかの犠牲者の作品も掲載する計画だ。
ビヤールは言う。
「この号の中では誰も殺されていない。通常通りのメンバーが登場する」。
ほかにはどのような内容が掲載されるのか尋ねると、同紙で執筆を行っている救急救命医は笑いながらこう言った。「わからないな。今週は大したことが起こっていないからね」。
(執筆:Rachel Donadio 記者、翻訳: 東方雅美)
(c) 2015 New York Times News Service
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