トヨタ系「スパイ容疑」事件、無罪確定が示す教訓 愛知製鋼の無茶な「元社員告訴」はなぜ起きた?

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トヨタ系の愛知製鋼の元社員が、不正競争防止法違反の罪に問われた裁判が、5年の歳月を経てようやく決着した。(写真は愛知県東海市の愛知製鋼本社ビル。筆者撮影)

5年の長期に及んだ裁判が、ついに決着の日を迎えた。

2017年2月、トヨタ自動車グループの鉄鋼メーカー、愛知製鋼の元専務ら2人が、同社の磁気センサーに関する技術情報を外部に漏らしたとして、不正競争防止法違反容疑で愛知県警に逮捕された。

今年3月18日、両被告に対して名古屋地裁が言い渡した判決は「無罪」。元専務らが扱ったのは「愛知製鋼の営業秘密とは言えない」として、検察側や刑事告訴した愛知製鋼側の言い分をはねつけた。検察は判決から2週間後の4月1日までに控訴せず、無罪判決が確定した。

長期裁判の末、名門企業の主張が通らなかったこの結果からは、日本の企業や技術開発が抱える深刻な課題が浮かび上がる。

「無罪は動かないと確信」

「裁判の途中から、私の無罪は動かないだろうと確信していた。実際、判決文はロジックを積み上げて、検察や愛知製鋼側にぐうの音も出ないというほどわれわれの主張を認めてくれた。これではさすがに検察も控訴できないだろうというこちらの読み通りになった」

愛知製鋼元専務で、被告の1人である本蔵(ほんくら)義信氏は、検察の「控訴断念」の一報を聞いた4月4日、現在の研究開発拠点である名古屋市のマグネデザイン社内で冷静に語った。

1974年に愛知製鋼に入社した本蔵氏は、「磁気インピーダンス(MI)効果」と呼ばれる現象を利用した高感度磁気センサー「MIセンサ」の開発を主導。車載センサーやスマートフォンの「電子コンパス」向けに生産体制を築き、同社の新規事業の柱にまで育てた。

ところが、さらなるMIセンサの性能向上や市場開拓を巡って会社上層部と本蔵氏との対立が深刻化。2012年の株主総会では本蔵氏が当時の役職である技術統括専務を任期満了前に退き、技術部門へのアクセス権のない委任契約の技監となることが決定。事実上、センサー事業から外されたため、同年に自らベンチャー企業としてマグネ社を設立した。

5年に及ぶ裁判で無罪判決を勝ち取った愛知製鋼元専務の本蔵義信氏(写真:筆者撮影)

独立後の2015年に本蔵氏が発見したのが、磁気現象である「GSR効果」の原理だ。これを応用し、愛知製鋼の「MI」よりも小型で高性能な磁気センサー「GSRセンサ」の製法特許を日米で取得した。

これが、今回の裁判の“火種”となった。愛知製鋼側は、MIセンサの技術情報を含む営業秘密を、本蔵氏と同僚で、「共犯者」として逮捕・起訴された菊池永喜氏が外部に持ち出し、不正に利益を得る目的で他社に開示したとして2人を告訴したのだ。つまり、GSRセンサにMIセンサの秘密情報が用いられ、それを他社に漏えいした、というのが会社側の主張だ。

裁判で争点となったのが、2013年に愛知製鋼岐阜工場(岐阜県各務原市)の会議室で行われた社外の技術者を交えた打ち合わせにて、ホワイトボードに書き込まれた内容が「営業秘密」に該当するかどうかだ。

検察側は2017年6月に開かれた初公判の冒頭陳述で、ホワイトボードに書き込まれていたのは愛知製鋼が「非公表のノウハウ」として管理するMIセンサ製造装置の機能や構造などの技術情報だったと指摘した。この情報は、「MIセンサ製造における愛知製鋼の根幹技術」であるというのが愛知製鋼側の一貫した主張だ。

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