職人の「感覚」をすべて「数値化」したパン屋の凄み 「たった5日でパン屋になれる」仕掛け人の想い

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このシステム化を可能にしているのが、同プロジェクトがこだわる「北海道産小麦100%、無添加」だ。これは消費者への大きな訴求ポイントでもあり、リエゾンプロジェクトの肝でもある。

こだわりは「北海道産小麦100%、無添加」(写真:リエゾンプロジェクト)

「日本の小麦はタンパク質量が少なく膨らみにくく、パン作りに向いていない。そのため、日本のパンのほとんどは外国産小麦を使っている。外国産はタンパク質が多いので簡単に膨らむ。そこにいくつかの添加物を加えることでより膨らみやすくなる。

パン職人は、外国産小麦でのパン作りが体に染み込んでいるため、国産小麦、しかも無添加でパン作りをしようと思っても上手にできないことが多い。北海道産小麦100%の無添加で膨らみにくいからこそ、変なクセがついていない未経験者の方が向いている」(河上氏)

感覚に頼らずすべて数値化

無添加にするということは、パン作りに欠かせない酵母菌を守る添加物も入れないということ。細やかな温度と時間の管理が必要不可欠となるため、感覚に頼るのではなくすべて数値化した。さらに、生地は繊細で力を入れすぎるのはご法度。配合も河上氏が37年間守り続けてきた秘伝のレシピだ。

とはいっても、フランスパンなどは難易度が高いため、最初は直営店の売れ筋で、短期間で習得できる5種類の生地からスタートするという。

研修風景(写真:リエゾンプロジェクト)

今、高級食パンやメロンパン、カレーパンなどの専門店は増えているが、実はパン屋は減少傾向にある。経済産業省商業統計調査によると、2007年に約2万4000軒あったパン屋(製造小売)は2014年には約1万6800軒まで減少。この先も減少すると見られている。

「パン屋が減っている理由は、後継者不足。職人の世界では、『見て盗め』が基本。自分もそうだったように、職人はどんどん頑固になってくる。家内工業は子どもが継ぐことが前提だが、長時間労働が当たり前のブラックな業界のため、子どもが継がない。職人はおいしいパンを作るが経営者ではない」(河上氏)

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