職人の「感覚」をすべて「数値化」したパン屋の凄み 「たった5日でパン屋になれる」仕掛け人の想い

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「ドイツではパン屋は独立開業するものではなく、代々受け継いでいくマイスター制度が敷かれている。成形担当、焼き出し専門など、分業制が確立しており、1人でひと通りできる人はいない。分業さえすれば、職人レスでパン屋ができる」と確信。2006年にリエゾンプロジェクトの礎となる自身の新たな店「おかやま工房リエゾン本店」(岡山県)を開店した。

リエゾン本店では、難しいと言われているパン職人の感覚的な技術を、「数値化、レシピ化」をすることによって、誰でもできるようにマニュアル化した。

ベーカリープロデューサーの河上祐隆さん(写真:リエゾンプロジェクト)

現役歯科医もパン屋をオープン

パン好きが高じて、2022年3月東京・浅草に「東京浅草 浪漫」をオープンした現役歯科医師の井上慎太郎氏は、フランチャイズも含め、いくつかのパン屋の説明会や研修に参加し、最終的にリエゾンプロジェクトの開業支援に決めた。その大きな理由が「パン作りがシステム化されていたこと」と「人への依存度が低いこと」だったと言う。

歯科医の井上さんが開業した「東京浅草 浪漫」(写真:リエゾンプロジェクト)

「歯科でも同じだが、資格のある人や技術のある人を見つけるのは難しい。技術にプラスアルファで人間性も見ようと思うと、さらに選択肢が限られる。ビジネスをやるなら、人に対する依存度が高くないほうがいいと思っていた。リエゾンプロジェクトは、パン作りのシステムがしっかりしていて、素人の私でもおいしいパンが焼けたことが決定要因」(井上氏)

山陰、東京、海外などで居酒屋「炉端かば」などをチェーン展開するかばはうすホールディングスは、コロナ禍で店舗の7店舗を閉店することになり、従業員たちの働き先を確保するために、異業種から参入し、「焼きたてパン あめのちハレ」(島根県安来市)をオープンした。

居酒屋は飲食業、パンは製造小売業とまったく別物だが、それでも「形態を変えながらでも会社として何かを続けていかなければいけない」という思いから、テイクアウト需要に期待を見出したこと、未経験でも5日間の研修で製パン技術が身に付くことが決め手となり、参入を決めた。

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