100年以上の歴史を持つ三井E&Sが祖業を手放すなど、再編の動きは急だ。
コロナ禍による物流混乱に伴う海運市況の上昇を受けて、一時冷え込んでいた造船市況も回復傾向だ。温暖化対策のために環境効率のよい船への需要が高まっており、技術力の高さを売りにする日本の造船各社には追い風が吹いているように見える。
しかしそうした要因があっても、造船業界は構造的な変革を迫られている。
祖業を売却した三井E&S
「より大きな枠組みで事業の持続的成長を期待したい」。2021年3月29日、三井E&Sホールディングス(旧三井造船)は、自衛隊や海上保安庁向けの艦艇・官公庁船事業を三菱重工業に売却することを決定した。記者会見で三井E&Sの岡良一社長は、硬い表情のまま淡々と説明。残る商船事業も「一般的な商船を造ることは想定していない」と話した。建造は協業先の常石造船に任せ、自らは設計に特化した「ファブレス造船」に移ることを宣言した。
1917年に三井物産造船部として創業した同社にとって、この決断は祖業を手放す苦渋の選択だ。昨年秋、創業の地である岡山県玉野市の玉野工場を記者が訪れると、三菱のマークをつけたクレーンが並んでいた。この地に50年近く暮らすという女性は「玉野といえば三井。少し寂しい」と話す。
三井E&Sはインドネシアで受注した石炭火力発電所の工事で、18年度以降複数回にわたって巨額減損を計上。経営危機に陥った結果、事業の切り売りを迫られたという事情はある。だが、こうした再編の動きはほかにも相次ぐ。
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