最高益更新の陰には償却減も。競争力維持には過去弱めた投資の復元強化が不可欠

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鉄鋼大手4社の2004年9月中間期の業績修正が出そろった。同時に発表された通期予想では、各社そろって過去最高益を更新する見通しだ。4社の予想経常利益の合計は9100億円で、バブル期の1990年度に記録した5776億円を大きく上回ることになる。
 今回の最高益更新は、需給逼迫を背景に値戻しが進んだ成果。ただ、これで楽観はできない。問題なのは、これまで鉄鋼不況の下、新鋭化投資はもちろん、維持・更新の投資さえ十分に行われてこなかった業界の実態だ。
 新日本製鉄の場合、1999年度までの設備投資額は2000億円台前半。年間の償却額も2000億円を大きく上回っていた。ゴーンショックによる鉄鋼不況が本格化する前の1999年度と比べると、今2004年度の償却額は1850億円と292億円も減少している。
 他社も事情は同様で、住友金属工業の償却額は今年度780億円と1999年度に比べて688億円減。神戸製鋼所も今年度820億円と同比356億円の減少。NKKと川崎製鉄が統合して誕生したJFEホールディングスも今年度の償却負担は1800億円で、統合前の両社の単純合計に比べ785億円減少している。
 鉄鋼不況下で悪化した鉄鋼大手のバランスシートは、有利子負債の削減が着実に進展。新日鉄とJFEのD/Eレシオは、それぞれ今期末1.26倍、1.70倍に低下する見通しだ。もっとも、韓国POSCO(0.36倍)などとは、依然格差が残る。
 今後、すでにシームレスパイプの新鋭化投資や新高炉建設を行った住友金属を除き、各社に不可欠なのは、国際競争力維持のための維持・更新投資や新鋭化投資だ。すでに新日鉄が君津製鉄所や名古屋製鉄所の亜鉛メッキ鋼板設備の更新を決定、神戸製鋼も神戸製鉄所や加古川製鉄所の高炉改修、神戸の連続鋳造設備の新設を決めているが、さらなる新鋭化投資が必要だ。投資をしつつ財務体質強化を進めるため、今後も好業績を維持できるかどうか。鉄鋼各社にとっては、これからが正念場だ。
【野口晃記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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