国税庁が海外税務当局と連携し、課税逃れの徹底阻止に目下動いている。

イラスト:関 祐子
「金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある」
2021年12月10日、自民・公明両党がまとめた税制改正大綱に盛り込まれたこの文言に、溜飲を下げた投資家は多かっただろう。
そもそも、岸田文雄首相は政権発足当初、「成長と分配」路線の実現に向けて、株式の配当や売却による金融所得について、増税を声高に訴えていた。
それが一転、市場関係者の猛反発や株価の急落という事態を受けて、発言はみるみるトーンダウン。結果として課税のあり方について「検討」を表明しただけで、肝心の見直し期限すら大綱に盛り込めなかった。
投資家や市場関係者サイドの大勝利ともいえる結果で、金融所得の多い富裕層もさぞ気をよくしているかに思われた。
ところが、富裕層の表情は一様に硬いままだ。というのも政権側が、まるで金融所得課税を増税できなかった意趣返しをするかのように、富裕層への徴税強化策を、大綱の至る所にちりばめてきたからだ。

自民党税制調査会は、主要メンバーの大幅な入れ替わりで、金融所得増税など目玉施策を早々に断念した(時事)
所得基準一部廃止の衝撃
中でも、富裕層が深いため息をつくのが、「財産債務調書制度」の見直しだ。解説していこう。
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら