また、数字は丸めずに正確に言うことも必要だ。免疫のない言葉を使うということ。ディテールがあると脳に記憶されやすい。数字に意味を持たせれば説得力が増す。
30秒のストーリー作りを
ノンバーバル(非言語)コミュニケーションもスピーチには重要な要素。ボディーランゲージは手の動かし方や首のかしげ方などすべてが意味を持つ。座り方一つで与える印象がまったく違う。
振り付けのように体を動かすことでコンフォート(居心地のいい)ゾーンを打ち破る。そういった練習を定期的に行う。ボディーランゲージを多用するトヨタ自動車の豊田章男社長はいったんコンフォートゾーンを出た人。ただ、日本ではやりすぎると反感を買うので抑えたほうがいい。
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は技巧にはこだわっていない。2人とも割と自然体でこなしている。エネルギーが全面に出るタイプなので人が動かされる。
話す内容、コンテンツにはストーリーが重要だ。その際に相手が聞きたい話をすることだ。ボールを投げても受け取ってくれる人がいなければ意味がない。難しいことを話す、いわば剛速球を投げてかっこいいだろうではダメ。コミュニケーションとして最悪だ。
一般のリーダー層は、豊田氏や孫氏のようなストーリーはないかもしれないが、さまざまな体験から何かしらのストーリーはあるはず。聞き手にとって関心があること、関係が深いことなどから共感できるトピックスを掘り出しておくことはできるはずだ。
まずは、30秒で語れるストーリーを作ってみたらいい。なぜ、ストーリーが重要かというと、ファクトとデータだけを淡々と示すだけでは心に残らないからだ。人の心を動かすのはストーリーだ。
人間の脳は、感情がロジックより勝つようにできている。スローレーンがロジックで、ファーストレーンが感情。感情に脳は乗っ取られてしまうのだ。いかにワクチンが科学的データとして効果があるかを話しても、恐怖心にあおられると見えなくなる。感情に動かされるストーリーはデータやファクトよりも優越する。
「昨日、こういうお客様がいました」。そう話し出すと、自分の話ではなくても、たちまち情景が浮かび出し、頭の中に残る。ストーリーにすることで可視化ができる。ただし、自分の自慢話はよくない。いちばん簡単に作れるのは、私は昔こういうふうに考えていたけど、その後にこういうことを悟った、という話。そうすれば、皆さんに残る。事実だけでは残らない。そのためには聞き手の感情を揺さぶるようなトピックスの棚卸しをしておいて、使えるストーリーをストックしておくことだ。
スピーチやプレゼンに重要な共感力だが、負の部分があることには注意が必要。共感を偽装することで人を扇動していくデマゴーグのようなタイプ。最近ではトランプ前米大統領だ。感情だけでロジックのないコミュニケーションになる。話を聞いても情報を受け取る人と反感を買う人に分かれる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら