ABCマート、異例の"高収益小売り"の秘密 なぜ12期連続で増収増益を達成できるのか

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さらに全店舗、全社員の売り上げデータを、誰でも見られるようにしている。インセンティブは設けていないが、成績を開示することで競争心が芽生える。「いちばん売った人がかっこいい、という文化がある」(野口社長)。

毎年50店の純増を計画

「少々お待ちください」。在庫がないと、近隣店舗にダッシュして在庫を取りに行くのは恒例だ。店舗間で在庫情報を共有し、欠品による機会損失を防いでいる。

近くの店舗にも在庫がない場合に備えて、iPadを活用し、通販在庫から取り寄せる仕組みも構築中だ。靴はサイズや色が衣料品よりも格段に多様で在庫管理が難しい。だが、この仕組みを使えば、店舗ではサイズを限って在庫を減らし、小型店を機動的に出すこともできる。

3つ目は積極的な出店だ。野口社長は「現在780ある国内店舗は(5割増の)1200店まで増やせる」と断言。毎年50店舗程度の純増を続ける方針を示す。

2014年秋には、柏高島屋ステーションモールへも出店。駅前の大手百貨店への本格出店は初めてだ。百貨店でスニーカーを扱っている店舗は少なく、需要があると判断した。高価格帯の品ぞろえで、客単価はほかの店舗より高めに設定している。

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2014年からアシックスとの取引も開始した

新業態開発も進める。野口社長は「ウォーキングやランニングシューズを扱う専門店を検討している」と明かす。大手ブランドで唯一扱っていなかったアシックスとの取引を2014年に開始するなど、新たな需要を取り込む構えだ。

スニーカーブームもいつかは終わる。その前に扱うブランドや業態を一段と多様化する狙いもありそうだ。2000年代前半の前回のブームが終わった直後は既存店が大きく落ち込むなど痛手を負った。当時と違い、ほかのシューズも増えてきたが、今でも最大の柱はスニーカー。今後も増収増益を続けられるか、底力があらためて試される。

「週刊東洋経済」2015年1月10日号<1月5日発売>の「核心リポート03」を転載、撮影:今井康一)

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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