水素を燃料とする究極のエコカー「燃料電池車」。普及を目指すトヨタの新たな戦略とは。

2020年12月にトヨタが発売した燃料電池車(FCV)の新型「ミライ」は、航続距離を初代より3割延ばし850キロメートルを実現した
「本格的な水素普及への出発点としての使命を担う車だ」。トヨタ自動車は昨年12月、燃料電池車(FCV)の新型「MIRAI(ミライ)」を発表し、国内販売を開始した。初代から6年ぶりの刷新で、技術部門トップの前田昌彦執行役員は2代目ミライを前に語気を強めた。
FCVは電気自動車(EV)と同様に電気で駆動モーターを動かして走行する。ただ、EVが電池にためた電気を用いるのに対し、FCVは燃料として積んだ水素と空気中の酸素を化学反応させて発電する。走行時には水しか排出せず、乗用車なら数分の水素充填で長距離を走行できるため、「究極のエコカー」ともいわれる。

トヨタはいち早くこの技術に注目し、2014年に世界初の量産型FCVとして初代ミライを発売。しかし、有害物質をまったく排出しない最先端の「ゼロエミッション車」として国内外で大きな注目を集めたものの、その販売は大苦戦。累計販売台数は国内でわずか約3700台、全世界でも約1万1000台にとどまり、「水素社会の実現を加速させるには力が及ばなかった」(前田執行役員)。
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