ウォルマート、ZARAが食らった事件の教訓 米国で続いたクレームは対岸の火事ではない

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次にオールドネイビーにまつわる問題だ。同社に対して、不正だとする署名がインターネット「www.change.org」を通じてなんと9万5000人以上も集まった。そしてオールドネイビーをはじめとする各社は、これを無視できずにいる。主張は何か。それは「女性のビッグサイズ服を高く売るな」というものだ。

読者の想像どおり、痩せ型の服より、大型の服のほうがコストは高くなる。当然ながら、表皮の量も異なるし、縫製の長さも違うし、在庫管理コストも変わってくる。だから大きな服は高くなる。しかし、S、M、Lサイズくらいは価格が均一だし、むしろそう設定されている。

とはいえ、ビッグサイズは、その許容量を超えている。だから、オールドネイビーがビッグサイズの服を高めに設定しているのはわからなくはない(なお、通常サイズのジーンズRockstar Super Skinny Jeansは27ドルで、ビッグサイズは40ドルだ)。

価格政策が性差別に?

ではなぜ「女性のビッグサイズ服を高く売るな」というのだろうか。ここで、主張を見てみよう。「たくさんの表皮を使えば、製造コストが高くなる(more fabric equals higher cost of manufacture)」のは理解しているのだが、「しかしそのくせに、大きなサイズのジーンズを欲する男性には小さな男性と同じ価格で販売する(However, selling jeans to larger-sized men at the same cost as they sell to smaller men not only negates the cost of manufacture argument)」から許されないという(!)。つまり、オールドネイビーの価格政策は性差別的であり、これを是正するのがグローバル企業の当然の道義というのだ(!)。

この署名運動が一定数の賛同者を得てオールドネイビーに訴えたのは2014年11月のことだ。なお、これに対するオールドネイビーの反応はいまのところ控え目なものだ。同社は返品を認めるとしており、価格自体に変更はない。それはやはり製造コストの違いだという。

なお、私見では、もちろん女性の主張はわかるものの、やや行き過ぎていると思う。気に食わなければオールドネイビーから買わない、というまっとうな選択があれば十分だろう。ただし、価格政策はこれまで企業の自由な意志に基づくと思われていたものの、これからは社会的な視線も考慮すべきとなった。これは「Stop up-charging for women's plus-sized clothing」と検索いただければ、当事件の報道を把握できる。

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