(第44回)就職を企業と学生のコミットメント(約束)の場としてとらえ直す

 吉澤氏は、「若者が育たず、辞める原因は、若者ではなくビジネスの側にある」とする。この十数年でインターネットと携帯電話によって社会が様変わりした。現在の就活・採活もWebなしでは考えられないが、十数年前までは紙のメディアが主流だった。

 企業の業務も変わった。グローバリズムの進展と情報技術革新に追いまくられて、業務プロセスが細分化、高度化した。業務プロセスが細分化されたために、仕事をしている人にも全体が見えなくなっているのが現状だ。吉澤氏は「情報技術による業務の細分化と高度化によって、若い世代は、全体像の見えない仕事に就かされ、現場の経験による成長を阻害されている」「細分化によって職業的手応えも失われた」と分析する。

 そういうビジネスの構造的変化が「若者のレベルが落ちた」と言われる現象の背景にある。しかし職場で起きている変化を理解している人事は少なく、「育たない」「使えない」「辞めてしまう」と表層的に語っているというわけだ。

●辞める理由は「初任配属の間違い」と「上司とのミスマッチ」

 吉澤氏が問題と考えているのは、採用プロセスと育成プロセスの乖離だ。まず、現在の採用プロセスを考えてみよう。特徴が3つある。

 1 大量のエントリー学生を集めるマス・リクルーティング
 2 厳選採用という名の学歴(学力)スクリーニング
 3 優秀(超上位校)学生の重複内定獲得とその他(中下位校)の未内定学生に二分化

 どの企業もこのような画一的な採用プロセスになっており、内定辞退対策として学生の歩留まりを想定した「水増し内定」になっている。

 採用基準は「ポテンシャル」だ。「即戦力採用」を掲げる企業もあるが、それは不可能だ。即戦力に見える学生はいるが、ビジネス経験のない学生が即戦力になれるはずはない。将来の可能性に期待するポテンシャルを採用基準にするしかない。しかし、そのポテンシャルの基準が極めて情緒的であいまいだ。とはいっても人事は新卒採用に膨大な労力、時間、コストをかけている。

 丁寧な選考を経て採用した新入社員の育成プロセスはどうだろうか。新入社員研修を経て初任配属され、OJTがスタートする。そこからは職場任せになっている。職場には今でも「最初はガツンとやったほうがいい」などという根拠のない暴論を吐く上司がいる。人事は新入社員を放置し、フォローしていない。そして新入社員が職場になじめず、育たず、辞めていく。吉澤氏は、辞める理由のほとんどは「初任配属の間違いであり、上司とのミスマッチ」と言う。よく入社3年で35%が辞めると言われるが、吉澤氏に言わせると「丁寧に採用しているのに入社した社員育成が雑すぎる」のだ。

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