渋澤 個人的には成長資金、保険などの保証に向ける資金、そして現預金が、それぞれ3分の1ずつという配分比率が良いのではないかと思います。
人口減少下でのフロービジネスは限界
中野 しかし、預金が抜けることを地方銀行は良しとするでしょうか。
藤野 預金からおカネが抜けたとしても、その銀行でじっくり投資信託の積立が行われれば、それで良いのではないかと思います。徐々にですが、草食投資隊のファンドを地方銀行が扱ってくれるようになり、長期投資の概念が少しずつ日本全国に広がっていけば、それは地方銀行にとっても決してマイナスではないでしょう。
中野 あとは銀行が投資信託の購入時手数料を予算化しないようにできるかどうかでしょうね。
渋澤 購入時手数料の確保は典型的なフロービジネスですが、これはいずれ破たんするでしょう。60代、70代の人口が2020年以降、減っていくことを考えれば、高齢者に新規ファンドを買わせることで購入時手数料を稼ぐというビジネスモデルは、長続きしないと思います。これからはストックを積み上げていくことが本流になるでしょう。その意味では、投資信託の積立購入によってストックを積み上げていくのは、銀行の生き残りにとっても重要な意味を持つと思います。

藤野 朝ご飯に関して、若い人はパン食で、年寄はごはんとお味噌汁という固定概念があるじゃないですか。でも、これが大きな誤解を生んでいて、実は今、60代の高齢者の方が、パン食比率が高いのですよ。
考えてみれば、今の60代が若い頃からパン食が普及してきたわけですから、それは当然のことなのですね。同じことは資産運用にも言えていて、若い人は回転売買、高齢者は預金にじっとしているという考え方だと、実体を見誤るのかも知れません。実際、投資信託で回転売買をやっているのは、恐らく高齢者でしょうしね。逆に言えば、預金にじっと凝り固まっている若い人たちが大勢いる可能性があり、それこそが問題だと思います。
中野 まだまだ地方銀行の先行きは大変そうですが、でも少しずつ変化も見られ始めていますよね。
藤野 地域金融という括りで考えると、現状でも一部の信用金庫などは高い与信能力を持っています。なぜなら信用金庫の職員は、積極的に現場に足を運び、成長しそうな個別企業に融資を申し出ている。実際、地方の有力企業に資金を出しているのは、信用金庫だったりします。
中野 以前、北海道のある信用金庫の理事長とお話をしたことがあるのですが、「地元経済を元気にしないと、われわれも生き残れない」という意識が強く、ふるさと融資などを積極的に活用して、ベンチャー企業にリスクマネーを融資しています。地方銀行生き残りの策も、こうしたところにあるような気がしますね。
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