「V字回復で終わらせない」日立の決意 東原社長自ら現場を回り、飛ばした檄

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社会インフラとITを組み合わせた「社会イノベーション」こそ、日立の存在意義だ

東原社長が常々強調するは「社会イノベーション」だ。社会インフラとITを組み合わせ、機器を売るだけでなく、ソリューションで提供することを図る。

今年10月には社長直轄の「エネルギーソリューション事業統括本部」を設置。社長自身が電力部門と情報部門の調整役となり、電力自由化などで新たに参入してくる事業者を囲い込むという。また、顧客の所へ出向き課題解決に取り組む、フロント(技術営業)部隊も強化。来年4月1日付けで100%子会社の日立ソリューションズから約4000人を日立製作所へ移す。インフラだけでなく、マイナンバーや銀行関連のIT投資の拡大も、積極的に取り込む方針だ。巨大な組織を硬直化させないよう、果敢にメスを入れ、刺激する。

むろんコスト削減も手を緩めない。「売上高10兆円は大きな数字」と東原社長が認めるように、2015年度の目標である売上高と営業利益率は容易に達成できる数字ではない。11~15年度までにグループ横断で累計4000億円のコスト削減を目指すのが、「日立スマートトランスフォーメーションプロジェクト(スマトラ)」だ。すでに13年度までに累計2200億円に達しており、東原社長は「(コスト削減に)達成のメドがついた」(同)と自信を見せる。

10月にはキャッシュ創出を促進する「スマトラ・フェーズ2」を立ち上げた。東原社長は「将来に向けた事業拡大をするにはM&Aも増える」と豪語する。一方で、日立が常に意識するグローバル・メジャー・プレイヤーの米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、9月に家電部門の売却を発表、事業の選択と集中でははるかに先を行くのが実態だ。社長就任から1年経たずに、そろり独自色を見せ出した東原社長。これから日立が回復から本格的な成長のステージに進めるかどうか、その双肩に全てがかかっている。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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